抄録
「フレイル(虚弱)」とは,健康と要介護の境界線を意味する。フレイルには,身体的,認知的,精神的,社会的側面が含まれるため,高齢者の支援には,身体面と心理面を融合した心身融和的な視点が重要である。本研究では,前期高齢者における心身の融和感と心理社会的要因に着目し,フレイルと心理的諸側面との関連を検討した。前期高齢者にインターネット調査を行い,回答が500名(男女各250名)となった時点で調査を終了した。その結果,心理社会的要因よりも,主観的健康感と心身の融和感がフレイルと心理的諸側面と強く関連していた。すなわち,主観的健康感と心身の融和感が高いほど,フレイルの度合いが低いという関連が示され,心身の融和感が高いほど,ネガティブ感情の度合いが低く,生きがい意識と内的統制傾向が高いという関連が示された。よって,心身の融和感は,前期高齢者のフレイルと心理的諸側面において,鍵となる概念と考えられる。