児童青年精神医学とその近接領域
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特集 児童・青年期における司法精神医学
発達症をもつ少年の司法鑑定の実際と問題点
義村 さや香十一 元三
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2018 年 59 巻 2 号 p. 177-186

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抄録

少年事件,あるいは検察官送致による刑事事件となった事案には,少年が自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder; ASD)を有するケースが一定数存在することが知られるようになった。従来の司法精神医学的解釈ではこれらのケースの理解が困難なことも少なくなく,児童精神科医による精神鑑定の要請が高まりつつある。

ASDを有する少年の司法鑑定では,ASDの特性を十分に踏まえた上で非行の経緯や動機,精神状態を評価・分析する必要がある。また,裁判員制度の施行により,司法と精神医学との二重の意味での非専門家である裁判員が刑事事件に対して判決を下すことになったが,従来の精神疾患との違いや臨床像の多様性,ASD者の精神状態は一般精神科医にとっても理解が容易でないことを鑑みると,鑑定後の証人尋問において,正しい理解を得るための説明にも配慮する必要がある。

本稿では,ASDを有する少年の司法鑑定および証人尋問での説明に関する留意事項について,障害理解,責任能力判断,従来の司法精神医学の通念からの乖離という論点から示した。

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© 2018 一般社団法人 日本児童青年精神医学会
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