2018 年 59 巻 2 号 p. 187-198
ADHDの中核症状は不注意,多動,衝動性であるが,なかでも衝動性の存在が日常生活に与える影響は甚大である。DSM-5となり自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)と注意欠如・多動症(Attention Deficit/hyperactivity Disorder: ADHD)との併存(ADHD/ASD)が認められるようになったが,ADHDにASDが併存することが衝動性に如何に影響を与えるかはほとんど分かっていない。そこで,今回我々は近赤外線スペクトロスコピィを用いてADHDとADHD/ASDに対し,衝動性と関連のある前頭葉の機能を評価した。対象としてADHD群は平均8.93歳の15例と,ADHD/ASD群は平均8.64歳の15例で検討を行った。さらに,年齢,性別,知能指数を一致させたControl群15例を対象とした。賦活課題としてはStroop color-word課題を用いて,課題遂行時の前頭前皮質の酸素化ヘモグロビン変化を測定し,ADHD群とADHD/ASD群を比較した。結果として,前頭領域全24チャネルのうち,Control群と比較してADHDおよびADHD/ASD群でチャネル5,15,16,23において有意に低値であった。また,Control群と比較してADHD群でチャネル11において有意に低値であり,ADHD/ASD群でチャネル12において有意に低値であった。さらに,ADHD群およびADHD/ASD群はControl群と比較して,正答数は有意に低く,誤答率は有意に高値であった。これらから,ADHD群とADHD/ASD群は前頭前皮質の血液動態反応およびStroop color-word課題の成績から衝動性を含めた実行機能障害に関して違いがあるとはいえないことが示唆された。