日本救命医療学会雑誌
Online ISSN : 2758-1055
Print ISSN : 1882-0581
症例報告
重篤な混合性アシドーシスを呈したが神経学的後遺症を 残さず救命できたアモキサピン中毒の一例
松尾 健志西村 哲郎溝端 康光
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2025 年 39 巻 p. 39-43

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抄録
 患者は30歳代女性. 自殺目的にアモキサピンを大量内服し当院へ搬送された. 内服量は5,000 mgであり致死量に達していた. 来院時, pH 6.399の混合性アシドーシスを呈していた. 痙攣が断続的に出現し止痙に至るまで難渋した. 第二世代三環系抗うつ薬中毒は, 痙攣重積や代謝性アシドーシス等の致死的な症状を呈し, 救命しえたとしても高次脳機能障害といった神経学的後遺症が残った過去の報告が散見される. 本例は検索し得た限り最も高度の混合性アシドーシスを呈していたが神経学的後遺症を残さず救命しえた. 人工呼吸器管理にて呼吸性アシドーシスを是正した. 抗痙攣治療にチオペンタールや再発予防に脂肪乳剤を投与した. また, 痙攣が断続的であったことが神経学的後遺症を残さなかった要因の一つと考えられた. 呼吸性アシドーシス是正のために呼吸管理を含めた全身管理を速やかに開始し, 抗痙攣治療に努め, 乳酸値の上昇を防ぎ, 代謝性アシドーシスを改善させることが救命のために重要である.
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