日本救命医療学会雑誌
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症例報告
外傷性白内障を発症した眼窩内木片異物の一例
稲田 雅美大野 雄康山田 勇小谷 穣治
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2025 年 39 巻 p. 31-38

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抄録
 眼窩内異物は, 眼球損傷や眼窩内感染などが懸念される, 注意を要する疾患である. 今回木片異物が左上眼瞼部より左前頭洞へ貫通し, 外傷性白内障を発症した一例を報告する. 81歳男性が自宅階段から転落し, 階下に置いてあった木箱が粉砕し木片が左上眼瞼部に刺入した. CTおよびMRIで左眼窩外側からに眼窩上壁を貫通し, 左前頭洞に到達する異物を認めた. 眼球損傷は認めなかった. 本症例は右高眼圧症で眼科通院歴があり, 受傷1週間前の左眼圧は19mmHg, 左視力は0.4であった. 受傷後の左眼圧は37.4mmHgであり, 異物除去により16mmHgまで低下した. しかし外傷性白内障を発症し左視力は0.03まで低下した. 感染兆候なく術後9日に退院した. 本症例の外傷性白内障は, 眼窩内木片異物によるひずみにより, 赤道部方向に水晶体が引き伸ばされた結果発症したと推察する. 本症例のように, 眼窩内異物ではたとえ眼球損傷がなくても, 間接機序により視力低下を来すことがあるため, 注意が必要である.
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