抄録
急性呼吸窮迫症候群 (acute respiratory distress syndrome : ARDS) は, 高い死亡率を伴う集中治療領域の代表的な急性呼吸不全であり, その診断および治療戦略は近年大きく変化している. 2024年には新定義 (New Global Definition) が提唱され, 従来のベルリン定義と比較して診断対象が拡大し, 非侵襲的呼吸補助下の症例や肺エコーを用いた評価も診断に含まれるようになった.
一方で, ARDSは極めて不均一な病態であり, 定義に基づく診断のみならず, 病態生理を踏まえた個別評価が重要である. 電気インピーダンス・トモグラフィ (EIT) や胸部CTを用いた肺リクルータビリティや線維化の評価により, PEEP設定を含めた個別化治療 (precision critical care) の実現が期待されている.
さらに, 重症例ではV-V ECMOが有効な治療選択肢となるが, その適応は人工呼吸期間のみならず, 肺病変の可逆性を考慮して個別に判断することが重要である.
本稿では, ARDS診療に関する最新の知見を概説するとともに, 病態に応じた人工呼吸管理およびECMO戦略について解説する.