日本救命医療学会雑誌
Online ISSN : 2758-1055
Print ISSN : 1882-0581
総説
敗血症性心筋障害(Sepsis-induced myocardial dysfunction)の病態と治療戦略
―2023〜2026年の最新知見に基づく統合的理解―
垣花 泰之
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2026 年 40 巻 p. 53-60

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抄録
 敗血症性心筋障害 (sepsis-induced myocardial dysfunction: SIMD)は, 敗血症に伴う急性心機能障害であり, 近年では単なる左室収縮機能障害ではなく, 左室拡張機能障害, 右室機能障害, 血管拡張, 頻脈などを含む多様な循環障害として理解されている. 病態には, 炎症性サイトカイン, 酸化ストレス, ミトコンドリア機能障害, Ca2+ハンドリング異常, β受容体シグナル障害, 微小循環障害などが複雑に関与する. 特に敗血症では後負荷低下により左室駆出率 (LVEF) が保たれることがあり, LVEFのみではSIMDを十分に評価できない. 近年は, speckle tracking echocardiography (STE) やglobal longitudinal strain(GLS) を用いた早期診断が注目されているが, 左室拡張機能障害や右室機能障害の重要性も再認識されている. 治療では, 感染制御, 循環蘇生, 血管作動薬, 呼吸管理を基本とし, 心エコーによるフェノタイプ評価に基づいた個別化治療が重要である. ドブタミン, PDE3阻害薬, levosimendan, β遮断薬などは特定の病態で有用な可能性があるが, routine使用を支持する十分なエビデンスはない. 近年は, 右室―肺動脈カップリング, RNA修飾, フェロトーシス, ミトコンドリア標的治療なども注目されている. 今後は, 単回評価ではなく, 時間経過に沿って病態を繰り返し評価する「動的フェノタイピング」に基づく個別化循環管理が重要になると考えられる.
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