2020 年 1 巻 J1 号 p. 92-99
現行の橋梁定期点検では,技術者が点検要領に従って部材毎に目視で損傷度を判定しているが,これを AI技術で代替できれば持続可能な点検システムの実現が期待できる.ただし, AIによるシステムが実社会で活用されるには,その AIの判断根拠を明らかにして人々に受容される必要がある.本研究では,橋梁部材画像から損傷度判定を行う畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を構築し,それに Grad-CAMを適用してCNNの判断根拠を可視化した.データ画像におけるCNNと人の判断根拠の整合を調べ, CNNの判断根拠の傾向を考察できた.さらに,CNNと人で判断根拠が整合した画像を訓練データとして再構成して CNNを構築すると,その判定性能を向上させられる可能性を示し, Grad-CAMによる判断根拠の可視化が CNNによる部材損傷度判定の検証と改良,そして受容の促進に有効であることを示した。