2022 年 3 巻 J2 号 p. 745-754
橋梁の老朽化による点検対象の増加および少子高齢化による点検技術者の減少が懸念されることから,点検作業の省人化を実現する新たな技術の導入が喫緊の課題である.近年,土木分野においても,機械学習として畳み込みニューラルネットワークを適用する手法が有効性の高い点検手法として注目され,既往の研究において,福島県が実施した道路橋点検結果の状況写真をトレーニングデータとする建設事務所および土木事務所単位の鋼橋の腐食検出器となる学習モデルを構築し,実用上の分類精度を有することが報告されている.このことから,本研究では新たに追加した地区と既往の研究による各地区のトレーニングデータを統合して拡充した2地区統合学習モデルを構築することによって分類精度向上の可能性を調査した.その結果,2地区統合により腐食のトレーニングデータが約2倍増加し,全トレーニングデータに腐食ラベルが占める割合を約5割確保することにより,腐食の分類精度の約6ポイントの向上に寄与することが判明するとともに,会津地区または県北地区のトレーニングデータを組み合わせることで,腐食の高い分類精度を実現した.