2023 年 4 巻 3 号 p. 582-595
阪神高速道路では,定期点検時に発見した損傷の簡易補修(以下,「点検時措置」という)に取り組み,それら実施内容を点検結果と共に記録しデータの蓄積に努めている.点検時措置の目的は,安全性の向上と予防保全に分かれるが,後者の目的で実施する,軽微な損傷に対する点検時措置による要補修損傷発生抑制効果の定量的評価はまだなされていない.そこで,本研究では,上記効果を定量的に評価する手法を提案する.具体的には,点検時措置によるサンプル欠損バイアスを考慮したマルコフ劣化ハザードモデルを用いて劣化過程を推定し,点検時措置の実施数を現行から変更した場合,5年後に各健全度に分類される損傷数をシミュレーションにより推定する.さらに,提案する手法を阪神高速道路の点検データへ適用し有効性を検証する.