2024 年 5 巻 3 号 p. 186-193
気候変動に伴い激甚化する豪雨災害に備えて,防災事業への適切な投資が重要となる.本研究では,防災設備の配備状況と災害被害を考慮した数理モデルに対して強化学習を適用する.100年分の将来降水量予測を基に確率的に算出される時系列の被害コストと,防災事業への投資コストの合計を最小化するような投資策を強化学習により探索した.学習結果を基にしたシミュレーションにより,強化学習による投資策は,事後対処的な投資策に比べて,短期的な投資コストを許容しつつも,長期的な総コストを4割程度削減できる可能性が示された.また強化学習による投資策では,災害リスクの上昇に先んじて防災事業へ投資を行い,事前に将来的な災害リスクの増加に備えた防災設備への投資を行う傾向がある事が示された.