2024 年 5 巻 3 号 p. 624-630
大規模災害が起きた際に医薬品が不足し,慢性疾患患者に対し必要性の高い医薬品の処方がされないと,医薬品使用者の病態悪化の可能性が高まる.本研究では,大規模地震災害発生時に医薬品の需要量が急増する事態に備えて,地域における将来の医薬品需要量を推計することを目的とする.石川県羽咋市を対象として,地域の過去 10 年間の医薬品処方状況を把握したのち,将来の医薬品処方状況の推計も行う.本研究では,慢性疾患患者にとって必要性が極めて高い医薬品である血圧降下剤,抗てんかん薬,糖尿病用剤を対象とし,時系列データの推計に用いられる SARIMA モデルを用いてそれらの平常時の処方件数を 5 年分推計する.分析の結果,血圧降下剤と抗てんかん薬の処方件数に関しては,推計開始月から 5 年間でそれぞれ約 34.2%,42.1%減少した一方で,糖尿病用剤の処方件数に関しては約 4.2%の減少にとどまった.