2025 年 6 巻 1 号 p. 1-13
Scientific machine learning(SciML)は,データ科学と物理法則・数理モデルの相互補完・相乗効果により,諸科学問題の解決を目指す研究分野である.本講演では,地震研究におけるSciMLの活用事例を紹介する.SciMLの代表的な手法にPINNと作用素学習がある.PINNは多くの理工学分野で活用され注目を集める.例えば地震の走時計算においては,PINNの導入により,教師データなしに様々な震源条件に対する同時求解・高速推論が実施できるようになっている.走時トモグラフィなどの逆問題を従来と異なる方法で解くこともできる.一方,作用素学習はDeepONetとFNOの2種類があり,関数から関数へのマッピングを学習する.作用素学習ができると,さまざまな速度構造に対して瞬時の地震動予測が可能になる.作用素学習にはまだアーキテクチャがやや複雑で未完成な面があるが,今後の大きな発展が期待される.