AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
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  • 縣 亮一郎
    2025 年 6 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    Scientific machine learning(SciML)は,データ科学と物理法則・数理モデルの相互補完・相乗効果により,諸科学問題の解決を目指す研究分野である.本講演では,地震研究におけるSciMLの活用事例を紹介する.SciMLの代表的な手法にPINNと作用素学習がある.PINNは多くの理工学分野で活用され注目を集める.例えば地震の走時計算においては,PINNの導入により,教師データなしに様々な震源条件に対する同時求解・高速推論が実施できるようになっている.走時トモグラフィなどの逆問題を従来と異なる方法で解くこともできる.一方,作用素学習はDeepONetとFNOの2種類があり,関数から関数へのマッピングを学習する.作用素学習ができると,さまざまな速度構造に対して瞬時の地震動予測が可能になる.作用素学習にはまだアーキテクチャがやや複雑で未完成な面があるが,今後の大きな発展が期待される.

  • 黄瀬 浩一
    2025 年 6 巻 1 号 p. 14-25
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    読むという行為は学習に非常に重要であり,その行為を解析することで読みと学びの量や質がわかる.ドイツ人工知能研究センターの紹介とともに,そこでの学習系プロジェクトを紹介する.例えばReading-Life Logでは,センサを着用したユーザが読んだものを記録し,人からと本からの相互解析ができる.さらなる学習支援として,何語読んだかを計測するワードメーター(万語計),読書量を増やすアクチュエータ,確信度推定を活用した学習支援などがある.これらと認知的負荷を推定する技術を統合したのがインテリジェントテキストブックで,興味のある部分や理解が難しかった部分などを特定する.ハイパーマインドでは,ユーザが苦労している部分に対して,補助教材で理解を促す.ただし,学習支援の有効性は人によって異なるため,処方箋が必要である.

  • 牛久 祥孝
    2025 年 6 巻 1 号 p. 26-40
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    Vision and Languageのカテゴリーには,ビジュアルとテキストから認識結果を出力するマルチモーダル理解,ビジュアルからテキストを出力するImage2Text,テキストからビジュアルを出力するText2Imageなどがある.現在はさらに派生研究が加速している.例えば筆者らの研究の一つに,人と融和して知の創造・越境をするAIロボットの開発がある.そこで必要とされるのが,科学的文献を学習し,自ら実験を行い,研究者と議論しながら賢くなる科学用基盤モデルの構築である.その他の研究事例としては,実験作業を自動でマニュアル化する研究,データから科学法則を見出し科学的発見をするAIの研究,新たな材料の発見をする研究などがある.新材料発見にあたっては,2つのアプローチがあり,そのうち結晶構造の生成にあたっては精度の高いデコーダを活用した生成AIをつくろうとしている.

  • 大竹 清敬
    2025 年 6 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    NICTでは,大規模言語モデル(LLM)やそれを用いたシステムの研究開発を進めている.海外製LLMの学習データに含まれる日本語データはわずかであり,そうしたLLMが広く用いられると,日本独自の文化が失われる等のリスクもあるため,大量の日本語データを用いた国産LLMの開発力を高める必要がある.日本語LLMの学習においては高品質な日本語データが重要である.NICTには,過去15年以上にわたって収集してきた大量のWeb データあり,これを用いた良質な学習データの構築を進めている.ハルシネーションやフェイクニュース等の対策の開発も進めており,現在我々が開発中の,多種のAIを組み合わせるプラットフォーム「WISDOM-LLM」を用いて,LLMが生成したテキストに対し裏を取ったり,根拠のある反論を生成する等が可能である.今後,増えるであろう「野良生成AI」による情報から日本社会を守るためには,複数の「正義を志向する生成AI」が互いに議論し,その結果を受けて人間が意思決定する「民主的AI」の世界の構築に向けた検討も進めている.

  • 辰巳 大介
    2025 年 6 巻 1 号 p. 53-74
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省は「i-Construction 2.0」を策定し,建設現場のオートメーション化を推進している.港湾の建設現場においてもICT施工や3次元データを導入し,生産性向上や労働環境の改善等を図っている.例えば,グラブ浚渫船の施工履歴データを活用した床掘工の出来形管理などの試行工事が始まっている.BIM/CIMの原則適用も開始され,一定規模以上の工事で活用し,3次元データを共有するクラウドも構築中である.さらに,物流,管理,インフラの3分野の情報を一元化するデータプラットフォームの運用も開始している.インフラ分野では,港湾施設の計画から維持管理までの情報を電子化し,GISから一元的なアクセスを可能としている.また,港湾工事の脱炭素化を目標として,CO2排出量の算定ガイドラインを策定するなど,効率的なCO2排出量の削減方策を検討している.なお,本稿は,第5回 AI・データサイエンスシンポジウム(2025年11月21日)の招待講演の内容を,講演録としてとりまとめたものである.

  • 板倉 健太, 林 拓哉, Chao Lin, 上脇 優人, 全 邦釘
    2025 年 6 巻 1 号 p. 75-85
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,Matterport Pro3で計測された橋梁の点群データを使用し,橋梁の構造情報を自動的に計算する手法を検討した.高欄や床版,主桁の寸法を計算し,その精度を評価した.点群は事前にアノテーションされており,その情報も利用しながら処理を行った.高欄の長さは,点群を上から見た視点の2次元画像に投影し,画像処理技術で推定した.RMSEは0.28mであり,5cm程度の誤差が生じる可能性が示唆された.床版の長さと幅員は,主成分分析や楕円フィッティングを比較し,RMSE はそれぞれ0.10mおよび0.50mであった.さらに,主桁の交点検出も行ったが,データの欠損部分では交点の位置推定が難しかった.今後は,より高精度な推定を目指し,深層学習などを用いた点群の自動分類との組み合わせによる検証が望まれる.

  • 穴吹 まほろ, 青木 泰一郎, 木村 真嗣, 後藤 幹尚, 岩波 光保
    2025 年 6 巻 1 号 p. 86-95
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    定期点検での橋梁や損傷に対する撮影技術や,画像データからひびわれ等の変状を検知するAI技術の発展に伴い,鉄筋コンクリート構造の橋脚や床版に対し,近接目視に代わる方法の一つとしてデジタル画像とAIとを組み合わせた橋梁点検が一部実践されている.この点検方法の更なる適用拡大に向けて,点検時間等に制約を受ける跨線橋点検の効率化に向けた,鉄筋コンクリート床版に生じるひびわれを対象にした点検と,交通規制を伴う横断歩道橋点検の効率化に向けた,鋼部材に生じる腐食を対象にした点検の,二つの橋梁点検でのデジタル画像とAIの活用結果を報告する.また,この取り組みから得られたデジタル画像とAIの活用における効果と留意点についても報告する.

  • 山本 敦大, 緒方 陸, 藤井 純一郎, 山本 一浩
    2025 年 6 巻 1 号 p. 96-106
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,土木分野では生産性の低さが問題となっており,BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)による生産性向上が進められている.一方で,BIM/CIMで活用する3次元データモデル作成には手間や時間を要する.そこで,3次元データモデルの作成を省力化するため,本研究は生成 AI(Artificial Intelligence)を用いた単純な3次元データモデルの対話的な生成手法を提案する.生成AIを用いることで,人手によるモデリングを生成AIへの自然言語による指示に代替できる.本研究ではIFC(Industry Foundation Classes)4.3を対象とし,検証実験として,単純な形状(直方体,円柱,球)のデータモデルの生成を試みた.検証実験の結果,作成したいモデルを正解とした提案手法の精度は直方体で64%,円柱で31%,球で44%であった.今後は生成の精度向上や土木分野で用いられる部材等のより複雑な形状,属性情報の生成が課題として挙げられる.

  • 中野 嵩士, 江藤 博哉, 上坂 正晃
    2025 年 6 巻 1 号 p. 107-115
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    土木・建築分野におけるデジタルデータを活用した効率化の取り組みとして,点群データから生成した3Dモデルを用いた配筋検査やインフラ補修検測の効果について,精度検証と従来方法との比較を行った.配筋検査の精度については,鉄筋間隔が相対誤差0.3ϕ以内,かぶり厚が相対誤差0.6ϕ以内の結果を得ることができた(ただし,ϕは鉄筋径).インフラ補修検測の精度については,はつり体積6%以内,はつり深さ及びかぶり厚7mm以内の結果を得ることができた.3Dモデルを用いた本手法と従来方法との比較について,配筋検査の作業時間を約8割削減することができ,インフラ補修検測の作業時間を約8.5割削減することができた.

  • 河合 芳之, 前田 新一, 河野 九三夫, 石黒 勝彦, 川村 誠治, 花土 弘, 岸 浩稔
    2025 年 6 巻 1 号 p. 117-123
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    一般に,道路冠水の対応では,30分前に冠水の予測が可能であれば,必要な対応が可能であると言われている.そのためには,30分先の降雨情報の精度向上が必要である.本研究では,マルチパラメーター・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)を活用し,過去の道路冠水が発生した事例から道路冠水予測モデルを構築・検証し,その結果を踏まえて,オンラインによる観測データの圧縮・復元技術を適用した道路冠水予測の実証実験を行った.今後は,実証実験で明らかとなった改善点を踏まえて,道路冠水前の早期行動による対策の円滑化に寄与することを目指す.

  • 佐藤 雅也, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2025 年 6 巻 1 号 p. 124-139
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,橋梁の維持管理業務を効率化するため,Multimodal Large Language Modelに基づく所見の自動生成技術を提案する.この生成AIに変状箇所の写真およびその所見を数例与えることで,これらの関係性を学習し,所望の変状箇所の写真について所見を生成可能となる.提案手法はこの特性を効果的に活かすため,所見項目ごとに関係性を学習する上でより有効な点検情報をクラスタリングにより発見し,それらの点検情報に基づき過去の点検調書を選定する.これにより,所見生成精度が向上するだけでなく,クラスタリングにより選定した点検情報と橋梁点検者の所見作成に内在する知識が関連することを明らかにする.実験では,提案手法が橋梁点検者の知見を反映し,高精度な所見を自動生成することに成功したことを示す.

  • 後藤 順太, 井上 和真, 荒井 日菜子, 菊池 静琉, 木村 清和
    2025 年 6 巻 1 号 p. 140-158
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,三次元表現を活用した河川の流況の可視化を実現するシステムの設計と実装に関する技術調査を行い,これを基にしたシステムの設計・実装を行ったものである.実装したシステムは,地物を表現するオープンデータを基に生成した三次元モデルに対して,グラフデータベースで管理する河川情報を基に生成した水面を重ね合わせ,リアルタイムに状況変化を反映するものとしている.最後に性能を向上させるために改善できる点を整理し,流況可視化システムを構築する際に検討するべき事項を提示した.

  • 林 亮佑, 八木 雅大, 高橋 翔, 萩原 亨
    2025 年 6 巻 1 号 p. 159-167
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,道路交通マネジメントのためのデジタルツインに関する取り組みが進められている.デジタルツインを実現するためには,基準データとして道路の正確な位置情報が必要である.そこで本稿では,道路の位置を高精度に測位可能とするシステムを安価に入手可能な機器で構築する.本システムでは,アンテナの直下に可視光カメラを装備することで,計測対象である区画線上をアンテナが通過できているかどうかをドライバが常に確認可能とする.さらには,画像解析により区画線とアンテナ位置のずれおよびその方向の計算を行う.この計算結果をドライバに提示することで,区画線からのアンテナ位置のずれの修正を促し,区画線の計測を支援する機能を有する.本稿の最後では,車道外側線位置を計測する実験を行い,提案するシステムの有効性を確認する.

  • 井本 翔一朗, 福井 千菜美, 八木 雅大, 高橋 翔, 吉井 稔雄
    2025 年 6 巻 1 号 p. 168-175
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    地方自治体では,路面に生じた変状を早期に発見するため,路面の点検が行われている.現在の路面の点検方法では,膨大な費用や時間がかかるため,費用や時間を削減する手法として,機械学習を用いた画像解析によって変状を検出する手法が研究されている.しかし,この手法では,学習データに含まれていない新たな種類の変状の検出が困難である.そこで本稿では,変状の無い路面の状態を正常と定義し,正常な路面の画像のみを用いて非正常な路面を検出可能とする手法を提案する.提案手法によって検出された非正常な領域に対して,重点的に点検を行うことで,効率的な点検が可能となることが期待される.本稿の最後では,日本の路面の画像,ナイジェリアの路面の画像を用いた実験によって,提案手法の有効性を確認する.

  • ⼋⽊ 雅大, 植⻄ 康太, 髙橋 翔, 萩原 亨
    2025 年 6 巻 1 号 p. 176-182
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    より高度な道路交通マネジメントの実現に向けて,エッジコンピューティングにより道路や交通の状況を観測する取り組みが進められている.多様な道路状況を正確に観測可能するためには,分散配置された各エッジにおいて,データを分析する識別器を逐次的に再学習する必要がある.効率的に識別器を再学習するためには,エッジ同士で直接データをやり取りする非中央集権型の分散学習が望ましい.本稿では,他のエッジが持つ知識を⽤いて,ニューラルネットワークに基づく識別器を再学習する⼿法を提案する.提案⼿法では,他の識別器の重み⾏列の⼀部を自身の識別器に置換し,誤差逆伝搬を適⽤する処理を繰り返し⾏う.重み⾏列の置換と誤差逆伝搬を繰り返すことで,安定した識別器の再学習が期待できる.

  • 木村 延明, 吉永 育生, 福重 雄大
    2025 年 6 巻 1 号 p. 183-191
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,生成AIを自然災害の予測に活用するための試みである.近年の気候変動に起因する河川洪 水・内水氾濫に着目し,生成AIに画像やテキストで問合せれば(以下,「プロンプト入力」という),洪水波形や浸水状況などが画像やテキストで回答できる方法を,既往の大規模言語モデル(LLM)を用いて構築する.物理法則に基づき洪水計算が可能なタンクモデルをLLMと連携させて,さらに洪水事象の降水量・流出量を追加情報としてLLMに参照させることで,適切な洪水計算が可能かどうかの検証を行った.プロンプト入力からの洪水情報からタンクモデルの内部パラメータを適切に調整できることを確認し,さらに,LLMと連続対話することで,内部パラメータのより良い推定値を提案できることも確認した.

  • 澤田 渚, 立石 良
    2025 年 6 巻 1 号 p. 192-197
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,道路カメラ画像と物体検出の組み合わせによる避難行動解析の有効性を検証することを目的として,富山県内に設置された道路カメラにYOLOを適用し,2024年能登半島地震発生前後の交通量を分析した.その結果,沿岸部から内陸へ向かう交通量の増加や,高台への避難や物資の買い出しと思われる行動が検知され,地震発生前後の富山県内全域における交通量の変化の傾向が捉えられた.YOLOを用いた画像解析は簡便であり,数値データよりもわかりやすく広く一般に伝えることが可能であり,地域住民の防災意識向上への貢献も期待される.

  • 石附 将武, 高橋 翔, 萩原 亨, 吉井 稔雄
    2025 年 6 巻 1 号 p. 198-207
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,深層学習による冬期の路面状態判別において,判別結果を自動で訂正する手法を提案する.一般に,深層学習による路面状態判別器は学習に用いた路面以外での判別精度が低下するが,判別したい全ての路面のデータを収集し判別器を学習することはコストの面で現実的でない.本手法は判別器の再学習を必要とせずその精度低下を抑制するものであり,判別した路面の確信度が低い場合に,判別器内の特徴ベクトルから他の路面の特徴ベクトル群に対してk近傍法アルゴリズムを適用しラベル訂正する.提案手法は,道路管理において使用されている乾燥,半湿,湿潤,シャーベット,凍結,積雪の6路面に判別が可能な,冬期の高速道路の路面画像で学習された路面状態判別器に対し,一般道の路面画像を用いた実 験を行い,その有効性が確認された.

  • 渡邊 祥庸, 金井 一蕗, 後藤 瑛介, 萩原 伊吹, 堀越 菜月
    2025 年 6 巻 1 号 p. 208-216
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    土木工学初学者に対し,身近な土木構造物の存在に気付く,多角的に構造物を観察可能とする,最新技術に触れてもらう,の3点を念頭に3次元スキャンした土木構造物を,VRを用いて観察する教材を作成した.さらに,この教材を群馬高専の学生15名に対して使用してもらい,アンケート調査を実施した.その結果,「3次元モデルを用いる有用性」,「VRを用いることの有用性」,「身近な環境を対象とする有用性」について,いずれも「そう思う」,「やや思う」の肯定的な意見が86.6%を超える回答が得られた.土木構造物の理解度のアンケート調査結果では,いずれもその名称を「答えられる」,「おそらく答えられる」の累計回答率が80%以上であり,今回作成した教材に一定の学習効果があると考える.

  • 和田 涼太朗, 大野 徹士, 吉田 郁政, 関屋 英彦, 安田 篤司, 吉浦 伸明
    2025 年 6 巻 1 号 p. 217-223
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    計測技術の進展により,リアルタイムで取得可能な大規模データを活用したデジタルツインが注目されている.デジタルツインではデータ解析や計測技術が重要であり,高精度な測位が可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)も注目されている計測技術の一つである.本研究では施工中の橋梁を対象にコンクリート打設の作業時におけるGNSSを用いたリアルタイムの3次元変位モニタリングを試行した.橋軸直角方向の動きはほぼ見られなかったが橋軸方向と鉛直方向は連動するように変位しており,コンクリート打設による基礎部分を含んだ橋梁全体の微小な回転による変位に加えてたわみによる鉛直方向及び橋軸水平方向の変位が生じていると推測された.施工中の橋梁の3次元的な挙動に関するGNSSを用いた連続モニタリングの可能性を示した.

  • 中島 佑, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2025 年 6 巻 1 号 p. 224-232
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,限られたデータで道路構造物の点検画像から正確な損傷程度を判定するため,データ拡張を用いたin-context learningを導入した損傷程度分類モデルを提案する.従来の損傷程度分類モデルでは,点検画像における損傷程度の曖昧さを未考慮であることおよび高精度なモデルを構築するために大規模なデータセットを必要とすることが課題であった.これに対し,提案手法では,事前学習済みのLarge Multimodal Model(LMM)を使用し,データ拡張を施した点検画像(拡張画像)を利用したin-context learningの導入により,少量の点検画像から損傷程度分類の曖昧性に対応可能なモデルを構築する.各拡張画像それぞれの分類結果を統合し,最終的な出力を生成することで,正確な損傷程度分類を実現する.本論文の最後では,実際の点検画像を用い,他の手法との比較により提案手法の有効性を検証する.

  • 中原 匡哉, 塚田 義典, 梅原 喜政, 梶谷 舞人
    2025 年 6 巻 1 号 p. 233-244
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,全国の橋梁の老朽化が深刻であり,国土交通省により継続的かつ効率的な維持管理が推進されている.そのため,手持ちサイズの LiDAR や Web カメラを搭載して SLAM により点群データを生成する技術の活用が期待されている.そこで,著者らは簡易に計測可能な LiDAR と Web カメラを搭載した SLAM型の計測ユニットを試作し,維持管理への活用が可能か検証した.その結果,得られた点群データには誤差を含むノイズが含まれており,そのままでは正確な橋梁の部位の寸法の把握が困難であることがわかった.そこで,本研究では,計測ユニットによる計測時や点群データの生成時に誤差となる要因を調査し,橋梁の維持管理に適した手法に必要な要件を整理した.

  • 中原 匡哉, 小林 泰雅, 石濱 裕幸, 井藤 博章, フィン アン ズン, 今井 龍一
    2025 年 6 巻 1 号 p. 245-257
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    建設現場の作業員の位置情報は,安全性や生産性向上のために広く活用されており,位置情報を取得するためにカメラ,GNSSおよびBLEビーコンなどの機器が用いられている.しかし,カメラは照度の影響を受けやすく,GNSSは屋内・地下空間での測位が困難であり,BLEビーコンは広域な現場全体を網羅的に測位するためには膨大な数の受信機の設置が必要であるといった実用上の課題がある.

    本研究では,照度に影響されず,屋内・地下空間や広域な現場でも計測できるLiDARを用いて,深層学習と動体検出技術により作業員を検出する位置推定手法を考案した.実験の結果,考案手法を用いた検出精度はF値約0.9となり,建設現場の作業員の検出および位置推定が実現できる可能性を示唆した.

  • 井上 和真, 後藤 源太, 横山 和佳奈, 川崎 佑磨, 小西 優真, 山元 沙貴
    2025 年 6 巻 1 号 p. 258-264
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,3次元モデルとIoTセンシングで得られたデータを統合したインフラマネジメント向けのプラットフォームを活用し,橋梁の損傷を遠隔観測し,維持管理や地震時の損傷状況の把握を迅速に行うことを目的として,高速道路の橋梁のような大規模な橋梁に適用に向けた検討を実施した.その事前準備として,中小橋梁を対象に3次元モデリングソフトであるRhinocerosとビジュアルプログラミング言語であるGrasshopperを用いて,統合プラットフォームを制作し,3次元モデルとIoTセンシングで得られた橋梁の現地の情報の統合が円滑に行うことが可能であるかを検証した.その結果,温度変化による桁伸縮に追随する積層ゴム支承のせん断変形を確認可能な写真の解像度の情報であっても,一般的なスペックの PCで,統合したプラットフォームが円滑に作動することが確認された.

  • 本坂 健太, 八木 雅大, 高橋 翔, 吉井 稔雄, 萩原 亨
    2025 年 6 巻 1 号 p. 265-272
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    積雪寒冷地では,降雪に伴って路面の変化が起こり,交通事故の要因となる.道路管理者が,管理対象となる路線に生じている路面状態を事前に把握可能となれば, 道路利用の安全性の向上が見込める.そこで本稿では,過去の路面データと気象データからMulti-LSTMを用いて路面状態を予測する手法を提案する.具体的には,まず,蓄積された路面データと気象データから時系列データと空間系列データを形成する.次に,時系列予測と空間系列予測を統合して路面状態を予測するMulti-LSTMに基づく予測モデルを構築する.最後に,時空間データを入力として構築したモデルによって路面状態の予測を行う.本稿の最後では,北海道で実際に観測されたデータを用いて実験を行い,6つの比較手法と比較することで提案手法の有効性を確認する.

  • 湯島 琉晴, 瀧本 康太, 有村 幹治
    2025 年 6 巻 1 号 p. 273-282
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では自転車走行空間の整備の一環として矢羽根型路面表示の設置が進められている.しかし,現在行われている矢羽根整備効果の調査では,汎用性が高い手法は確立されていない.一方,AIを用いた画像解析技術を利用した自動車交通量解析が導入されている.しかし,国内における画像解析技術による自転車交通量調査を意識した研究例はまだ報告数が少なく,有用性の認知度に対して研究蓄積は進んではいないのが現状である.そこで本研究では画像解析技術を用いて自転車を車種別に計測するモデル構築を行う.次に,札幌市の矢羽根整備前後で矢羽根上及び歩道上の走行時における交通量を目視調査し,その結果を用いて自転車利用者の走行位置選択意識に関する要因を明確にするモデルの構築を行い,自転車走行空間の走行位置要因分析を行う.

  • 田村 泰史, 嶋田 唯一, 高橋 めぐみ, 渡辺 隆司
    2025 年 6 巻 1 号 p. 283-288
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    土木施工分野において,メンテナンス工事の割合が多くなってきている.メンテナンス工事は,既存構造物を対象とした工事であり,新規工事と比較して施工範囲の制限等の特有の施工条件を有するため,生産効率や安全性に対する配慮の割合が大きい.本稿では,メンテナンス工事における実際の事故事例への課題解決について,空間情報を活用した事例と今後の展開についてAI活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)施工モデルの構築に関する検討結果を報告する.

  • 阿部 雅人, 杉崎 光一, 全 邦釘
    2025 年 6 巻 1 号 p. 289-298
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    カーボンニュートラル実現に向けたAI・デジタルツインの動向を調査し,今後の課題を展望する.GHG排出源は多岐にわたることから,排出係数や活動量の計測・評価,関連データ等の抽出・連携や最適化等,AIやデジタルツイン技術の役割は大きい.インフラ分野においても,適用が進むBIM/CIMをベースとした排出量算定・最適化の研究開発が求められる.土木構造物は,都市全体の排出量への影響も大きいため,単に構造物としてのスコープのみならず都市としてのスコープからの排出量低減を視野に入れる必要があり,今後,さらに複雑な最適化問題を解く必要が出てくると想定され,量子計算や大規模データベース等のコンピュータサイエンスの先進技術を取り入れた研究開発も必要であると考えられる.

  • 塚田 義典, 中村 健二, 梅原 喜政, 石川 健太, 今井 龍一
    2025 年 6 巻 1 号 p. 299-311
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    道路管理者は,道路舗装の状況を把握するため,路面性状調査や目視点検を実施しているが,労力および費用の面で課題を抱えている.そのため,著者らは,ドライブレコーダで撮影した道路舗装の動画像と深層学習を用いた簡易的な道路舗装のひび割れ診断手法を考案した.しかし,パッチングやマンホール,前方車両をひび割れと誤判定する課題が生じている.そこで,本研究では,著者らが考案した既存手法に,パッチング,マンホールおよび前方車両の地物を検出してフィルタリングする機能を追加することで,道路舗装のひび割れ診断の精度を向上する手法を考案した.実証実験より,算出したひび割れ率の一致率が既存手法と比較し約5%向上したため,考案手法の有用性を確認した.

  • 塚田 義典, 中村 健二, 梅原 喜政, 岡本 拓也, 今井 龍一
    2025 年 6 巻 1 号 p. 312-322
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    道路管理者は,道路舗装の損傷状況を把握するため目視点検や路面性状調査を実施している.しかし,人手不足や費用面の課題がある.解決策として,車載カメラの画像と深層学習を用いたわだち掘れ検出手法が開発されている.著者らもドライブレコーダの動画像と画像領域分割を用いたわだち掘れ検出手法を考案しており,既存研究ではわだち掘れが道路の縦断方向に発生する特徴を考慮することで誤検出の軽減に成功した.一方,動画像へのわだち掘れの映り込みは走行速度に依存するため,一定速度での走行が前提となり,粗い路面の誤検出や検出漏れの課題があった.

    本研究では,走行速度を考慮したわだち掘れの検出結果の補正手法を考案した.そして,実証実験の結果,既存研究の課題が改善されることを確認した.

  • 高橋 悠太, 高瀬 愛瑠, 松島 恵悟
    2025 年 6 巻 1 号 p. 323-330
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタルツインは物理空間を精度よくデジタル空間に再現することが求められる.高密度に物理空間における情報を反映できればよいが,誤ったデータが入力された場合,あるいはデータが不足した場合に事故や障害が生じる.様々なデータソースを照合することで,デジタルツインを修正・補完することを考え,本研究では自動車道において大型車両の規制範囲を示すJARTICのデータをGoogle Street View等に存在するジオタグ付き写真データと道路座標と組み合わせることで照合可能か検証する.写真上の道路標識をYOLOXで検知し,関連する座標とOpenStreetMapから得られた道路ネットワークを組み合わせて大型車両の規制範囲を推定し,JARTICデータと重ね合わせることで照合可能であることを確認した.

  • 横山 勇気, 田中 俊成, 木ノ村 幸士
    2025 年 6 巻 1 号 p. 331-339
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,3Dプリンティング(3DP)で作製される積層体の物質移動抵抗性に積層パスが及ぼす影響を分析した.その結果,粗大空隙の形状や形成箇所,水分逸散性状,吸水量,水分浸透深さに積層パスによる差異が見られた.積層パスによる差異が見られた要因として,積層パスの種類により,列界面と層界面の交差箇所に形成される連続性を有する空隙の形成箇所が変化し,水分移行経路の特徴に違いが生じたことが挙げられる.累積空隙量と吸水量や水分浸透深さの関係を分析した結果,積層パスに応じて相関関係が変化し,積層パスの種類により水分移行経路の特徴が変化する可能性が示唆された.本検討結果を踏まえると,物質移動抵抗性を確保するためには,水の侵入方向と同一方向に連続性を有する粗大空隙が形成されないようにすることが重要と考えられる.

  • 山根 達郎, 陳 瑜, 久保 栞, 浅野 和香奈, 片山 直道, 岩城 一郎, 全 邦釘
    2025 年 6 巻 1 号 p. 340-348
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    維持管理の効率化のために360°カメラを用いた構造物の全天球画像の撮影が注目されているが,一般的なビューアは画像を表示する機能のみに限定されるため任意の画像を探し出し閲覧するのに手間がかかるうえ,構造物の名称や撮影日時,損傷の位置や種別の記録・確認といった維持管理ならではのニーズには対応していない.本研究では,Structure from Motionを活用して複数の全天球画像の撮影姿勢を紐付けることで,市販の360°カメラによって撮影した画像を用いて撮影位置や損傷情報をスムーズに確認できる点検情報管理システムの構築を行った.また,複数の橋梁を対象として,構築したシステムの適用を行った.本システムはクラウドとローカル環境の双方で利用でき,管理者の事情に沿った活用が可能である.

  • 安宅 里佳, 長倉 康裕, 田部 成寿, 水口 知樹, 全 邦釘
    2025 年 6 巻 1 号 p. 349-356
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    鋼橋の保全工事では,補修・補強のために既設部材に対して新規部材の追加あるいは部材の交換が行われる.三次元点群の計測により既設部材の形状及び寸法を詳細に把握することが可能である.しかし,点群から三次元モデルの作成には時間がかかっており,効率化等の観点から自動処理が求められる.また,部材の交換には既設の高力ボルト孔を流用することが多いものの,高力ボルトの中心位置を自動抽出するプログラムは確立していない.本検討では,点群から高力ボルトの中心位置を探索するアルゴリズムと高力ボルトの種類に対応したパラメータを検討し,鋼橋の部材接合に必要な精度で探索できることを示した.

  • 原田 紹臣, 貝戸 清之
    2025 年 6 巻 1 号 p. 357-368
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/21
    ジャーナル オープンアクセス

    厳しい財政状況の下,道路橋の老朽化対策の一つとしての集約・撤去が,地域インフラ群再生に向けた長期的な視点において有効な手段の一つとして期待されている.その際,EBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)の観点からの住民や利用者の理解が重要であると考えられる.そこで,住民等の視点に配慮した老朽化橋梁の効果的な集約・撤去に向けて,既往のアンケート調査結果において回答されたインフラの維持管理に関する要望等に対して,多変量解析やChatGPTを活用した分析により,現在の課題や今後の方向性等について考察した.分析結果によると,住民の属性や居住環境等の違いがこれらの課題の認識や要望に影響を与えることが示唆された.さらに,集約・撤去時における代替橋梁との位置関係(代替橋梁との距離)に関して,目安との一つとなる関係式について提案した.

  • 吉永 育生, 福重 雄大, 皆川 裕樹, 桐 博英
    2025 年 6 巻 1 号 p. 369-373
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    浸水が発生する可能性が高く,土地利用の大半が農地で小規模な水路が多い農村地域の特徴に対応し,複数地点における水位の一元的な表示と,リアルタイムで行う水理解析の表示に対応したアプリケーションを構築した.3D版のGISをビューアとして利用し,一般的なブラウザによって閲覧と操作を行うことができる.地物を3Dモデルで再現しており,水路の水位や浸水した場合の水深も3Dモデルで再現する.現地で観測した水位をほぼリアルタイムで表示し,水路を超える水位が観測された場合は浸水範囲とその水深を表示することができる.構築したアプリケーションを佐賀市川副町の低平地に適用し,2024年8月の台風10号による浸水の状況を再現することができた.

  • 福井 千菜美, 丹 悠紀, 高橋 翔, 吉井 稔雄, 萩原 亨
    2025 年 6 巻 1 号 p. 374-383
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    積雪寒冷地では,冬期道路において吹雪や強風で地面の雪が舞い上がることによる視界不良が発生し,交通障害や事故の原因となっている.その対策として,ドライバー自身に安全な交通行動を促すようなソフト面での対策が道路吹雪災害には必要不可欠である.本稿では,実際の冬期道路のモニタリングによって得られた道路情報を用いて稚内市のドライバーにアンケート調査を行った.さらに,画像を用いて実際の道路状況の情報を提供することや,視界状況および路面状況から統合的に算出される通行困難状況が有用である可能性が示された.

  • 柴田 楓也, 菊池 純貴, 三村 亮, 岩田 伊織, 上田 芳弘, 坂本 一磨
    2025 年 6 巻 1 号 p. 384-394
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,作業ロス削減のためデジタル技術を導入する企業は増えているが,デジタル技術の導入にはコストと労力を必要とする.そこで,本研究では,一人称視点の動画像と三人称視点の動画像から抽出した骨格情報を活用し,行動分類を行い,データ収集の負担を減らすことを目指す.従来の手法において,静止画のみの行動分類では歩行等の動作情報が欠ける点,骨格情報では作業対象物や環境情報が不足する点,これらの2点が課題としてあげられるため,これらの欠点を補完しあう二段階モデルを提案する.具体的には,第一段階として一人称視点の動画像をVGG16で作業対象物を分類し,第二段階として三人称視点の動画像から得られる骨格情報を利用してST-GCNで動作を分類する.本手法により,対象物の特徴と動作の詳細を統合的に解析することが可能となり,分類精度の向上を目指す.

  • 島田 徹, 小林 実和, 永田 直己, 全 邦釘, 永谷 圭司
    2025 年 6 巻 1 号 p. 395-402
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    災害対応においては,時々刻々に変化する情報を多くの関係者で共有することが求められるため,こうしたプラットフォームの活用が期待されている.河道閉塞災害の対応初動期は,多様な情報を災害対応の判断材料として多くの関係者で共有することが求められる.特に3次元で表示することで自然災害の専門家で無くても現地状況を俯瞰的・統合的に把握することを支援する効果が得られるものと考える.河道閉塞災害は,決壊による被害の拡大が急迫するような状況が想定され,自然災害の中でも情報共有の必要性が特に高い災害と考えられる.本稿は,こうした河道閉塞災害の特徴を踏まえて,災害対応のために情報統合プラットフォームを利用することを目的として,情報統合プラットフォームの設計と実装について整理を行い,フィールド試験結果のプロトタイプへの実装を通し,災害時を想定した情報共有について試行的な検討・整理を行う.

  • 中村 健二, 塚田 義典, 清水 則一, 浅野 達海, 山本 忍, 仲条 仁, 平野 順俊, 今井 龍一
    2025 年 6 巻 1 号 p. 403-416
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では,風水害による河川の氾濫や土砂災害が頻発している.迅速な被災状況の把握のため広域を観測する衛星SARの画像が利用されるが,その画像は一般に有償である.被災状況の把握やインフラ管理の高度化には無償のSAR画像の活用事例の創出が有効な一策となる.既存研究では,SAR画像の後方散乱係数の減少から浸水域を推定する手法が提案されているが,後方散乱係数が減少しない都市域は浸水域の推定が難しい課題がある.広域の浸水被害を把握するには,都市域を含む国土に適用可能な手法の確立が求められる.

    そこで,本研究では,後方散乱係数から浸水域を抽出し,深層学習を用いてコヒーレンス値から都市域の浸水域を抽出する手法を考案した.その結果,後方散乱係数では捉えられなかった都市域の浸水域を推定できる可能性を示した.

  • 梅原 喜政, 塚田 義典, 中村 健二, 石引 暖也, 今井 龍一
    2025 年 6 巻 1 号 p. 417-432
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/24
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,道路巡回や路面性状調査の実施範囲が限定的であるため,プローブデータを用いた簡易的な道路舗装の点検手法の開発に向けた研究が進められている.著者らは,時系列を考慮することで縦断方向に連続して発生する損傷の解析が可能な深層学習モデルのLSTMを用いて,単一時期のプローブデータから道路舗装の損傷を判定する手法を考案している.しかし,単一時期のプローブデータでは,損傷の上を走行していない場合に誤判定する課題がある.一方,多時期のプローブデータでは,機材の設置位置により取得される加速度の傾向が異なり,適切に判定できない課題がある.

    本研究では,加速度を補正することで,多時期のプローブデータから道路舗装の損傷を判定する手法を考案した.その結果,F値0.8以上の精度で道路舗装の損傷を判定できた.

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