2025 年 6 巻 3 号 p. 275-286
本研究は,橋梁の健全性判定において,著しく不均衡なデータ下での高精度な分類モデルの構築が可能か検証する.橋梁点検データは,重大な損傷を示す「IV: 緊急措置段階」の画像が極端に少なく,通常の学習では,AIモデルの予測が多数クラスに偏る課題がある.そこで本研究では,画像認識で広く用いられる基盤モデルのファインチューニングにおいて,データ不均衡問題への有効性が知られるFocal Lossとデータ拡張を組み合わせ,その相乗効果を橋梁データセットにおいて網羅的に検証する.実験では,これらの既存技術の有無による性能を定量的に比較分析した.その結果,両技術の組み合わせが「IV: 緊急措置段階」を含む少数クラスの分類精度を大幅に向上させ,モデルが重大な損傷を見逃すリスクを低減できることを実証した.この結果は,既存技術の組み合わせが,橋梁点検という実社会の課題の解決に有効であることを示している.