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都築 幸乃, 七海 友康, 吉田 龍人, 大久保 順一, 藤井 純一郎
2025 年6 巻3 号 p.
1-12
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,インフラの老朽化が進む中,効率的な維持管理手法の確立が喫緊の課題となっている.本研究では,デジタルデータを活用した点検作業の自動化による人的作業の省力化を目的に,河川護岸の変状自動検出手法の開発に取り組む.変状データの収集が困難な画像認識タスクにおいては,教師なし異常検知手法が有効である.しかし,既存手法には,河川護岸の多様な変状タイプに十分対応できないという問題がある.そこで本研究では,代表的な異常検知手法である PatchCore を基盤とし,(1)正常データセットの構築手法,(2)特徴量抽出器における中間層の選択,という二つの観点から改良を加えた新たな異常検知手法を提案する.実験の結果,提案手法は既存手法と比較して,河川護岸における多様な変状をより高い精度で検出できることを実証した.
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舘田 英里香, 内田 慎哉, 森本 亮, 長谷 啓司
2025 年6 巻3 号 p.
13-24
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,道路橋 RC 床版の舗装打換工事における打音検査の効率化・客観化を目的に,打撃音のスカログラムを入力とする深層学習に基づく欠陥分類モデルを構築し,その性能と計算コストの関係を整理した.その結果,事前学習済み CNN を用いたファインチューニングは高い正解率を達成する一方で学習に時間を要し,CNN-SVM ハイブリッドは学習時間を大幅に短縮できるものの正解率がやや低下することが明らかとなり,両者はトレードオフの関係にあることが示された.したがって,分類精度を最優先する場合はファインチューニングを,迅速な点検が必要な現場では CNN-SVM ハイブリッドを選択するなど,条件に応じて学習手法を適切に使い分けることで,道路橋 RC 床版の点検ツールとして柔軟かつ実用的な運用が可能となる.
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和田 拓実, 河島 陽平, 楠窪 剛, 中村 秀明
2025 年6 巻3 号 p.
25-36
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
社会インフラの定期点検は,一般的に5年ごとに実施されるが,その間に損傷が進行し,次回点検時には補修・補強工事が必要となり,多額の工事費用が発生する可能性がある.本研究では,空港に設置された進入灯橋梁を対象とし,腐食箇所の早期発見による長寿命化を目的として,腐食の自動検出手法を検討した.具体的には,物体検出アルゴリズムである YOLO(You Only Look Once)を用い,主構造部およびボルト部を対象に検証を行った.その結果,同一の腐食であっても,発生箇所の構造形状が検出精度に大きな影響を及ぼすことが確認された.また,進入灯橋梁は設置数が限られており,使用可能な教師データが過去の点検調査記録に限られることからデータ拡張による補完手法を導入し,その有効性を確認した.
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杉崎 光一, 全 邦釘, 阿部 雅人
2025 年6 巻3 号 p.
37-45
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
LLM(大規模言語モデル)が様々な土木関連業務で利用されているが,実際の業務で利用する上では,土木の専門知識に基づいた回答が必要となる.専門知識を導入する方法として費用対効果が高い方法として RAG(Retrieval Augmented Generation)が利用されるが,より多様な用途に利用する上で,より自律的に LLM を活用する方法としてエージェント技術が発展しており,エージェントを組み合わせて用いるためのプロトコルとして MCP(Model Context Protocol)がある.本論文では,MCP に着目して LLM の進展を概観し,MCP を具体的なインフラ・防災分野へ適用する検討として,RAG の高度化,複数 API を連携させた生成,アプリを連携させた方法を実装し,MCP の設計の考え方について具体例を挙げ記述した.
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松下 孝星, 後久 華穂, 山本 義幸, 中村 豪, 中村 栄治
2025 年6 巻3 号 p.
46-55
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
鉄道施設の三次元設計やデジタルツイン構築において,軌道中心は空間モデルの基準線として重要な役割を担う.本研究では,地上型レーザスキャナ(TLS)により取得された鉄道空間点群に対し,レールパーツの重心を抽出し,それらに基づく三次元レール形状の近似方式を構成・評価した.媒介変数(Y 座標/曲線長),近似手法(最小二乗法/RANSAC),および方向適用(共通/分離)という 3 要素の組合せにより 8 通りの方式を設計し,近似精度と誤差構造の違いを定量的に比較した.評価の結果,曲線長を用いた方式ではX 方向のばらつきが安定した.またRANSAC は水平方向で高い適合性を示す一方,鉛直方向では構造的変化を除外する傾向も観察された.さらに,TLS 点群の誤差構造や整列処理の影響も評価され,軌道中心線の三次元構成に向けた方式選定と観測・処理条件の重要性が示された.
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伊藤 昴, 郷右近 英臣
2025 年6 巻3 号 p.
56-63
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,都市のヒートアイランド対策として街路樹等のグリーンインフラが注目される一方で,コスト面から街路樹等が撤去されたり,新規整備されなくなるといったケースが増えつつある.その背景として,道路空間における街路樹等の緑の効果が十分に検証されず,その機能・価値が評価されていないことがあると考えられる.そこで本研究は,道路空間において地表面温度に与える要素として,緑と沿道建物に注目し,その関係性を検証した.その結果,単純な一次線形回帰モデルではなく,条件によって各要素の作用の仕方が異なる可能性が示唆された.また,広域な都市域スケールに比べると,道路空間のような局所的なスケールにおいては,緑被の影響が相対的に強いことが確認された.
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北村 諒馬, 石井 明, 七海 友康, 都築 幸乃, 繁田 淳吾, 権神 侑貴
2025 年6 巻3 号 p.
64-76
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
従来のダム堤体におけるクラックマップは,知識と経験を有する技術者による目視に基づき作成されてきたが,熟練技術者の高齢化や人手不足により,属人性を排除した効率的な劣化検出手法の導入が求められている.本研究では,クラックマップ作成の一次スクリーニングとして異常検知を活用し,目視による劣化抽出の作業精度と速度の向上について検証した.そのために,天候や季節要因により日照条件の統一が困難な大規模構造物に対し,撮影画像の色調補正が三次元復元モデルおよびAI異常検知精度に与える影響を検証し,その有効性も評価した.
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境田 伸哉, 津島 博志, 秋本 克哉, 洲崎 文哉
2025 年6 巻3 号 p.
77-90
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本検討では,河川・道路に設置された CCTV の現在の画像と過去の蓄積画像との差異から河川・道路管理者が着目する様々な事象を検知するツールの開発を目的として,LVLM による VQA タスクを用いた事象検知手法の検討を行った.手法の実用性を評価するために,種々の事象(冠水や土砂災害など)が映った実映像と施設管理者の視点で発生事象を問うプロンプトの組み合わせを複数の LVLM モデルに入力し,出力結果を定量的な評価指標(適合率,再現率,F1-score)により比較・評価することで,実用に足る LVLM モデルや道路および河川における検出可能事象,映像上の条件や留意事項,システムの入力条件の方向性を明らかにした.また,誤検知や未検知の発生要因を考察,整理した上で検知精度向上に向けた対応策を検討した.
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川原 咲南, 笠間 清伸, 呂 高原
2025 年6 巻3 号 p.
91-97
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
振動台に作製した模型斜面を用いて,落石の初期姿勢と地震時加速度を変化させた6種類の落石実験を実施し,落石の到達確率の空間分布を得た.本研究では,特異値分解による空間モード分析を適用し,落石の到達確率の空間モードと,落石の初期姿勢および地震時加速度の関係を明らかにした.空間モード分析によって得られた落石の到達確率の空間モードは,第1~3固有モードまでで,97.9%の確率分布が説明できる.落石の到達確率の第1固有空間モードは,初期落石位置から分散角 31.88˚の領域で分布傾向を示した.また,落石の2 種類の初期姿勢と斜面垂直方向の到達確率に着目すると,落石の周面が水平な状態で斜面と衝突する姿勢Aでは,分散角31.88˚の幅広い領域に分布して落下し,落石の角が斜面と衝突する姿勢Bでは分散角が5.45˚の狭い領域に落下する傾向を示した.
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高橋 悠太
2025 年6 巻3 号 p.
98-107
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
デジタルツインは物理空間を精度よくデジタル空間に再現することと同時に,誤ったデータが混入した場合にも照合可能であることも求められる.そのため,多様な方法によってデータを照合しデジタルツインを冗長的に修正・補完可能であることが望ましい.既往研究では公的な公開データをジオタグ付き写真データと組み合わせることで,データが照合可能か検証している.本研究では既往研究でなされた大型車両規制範囲を推定する際に用いられたジオタグ付き写真データを対象に,困難であった画像に写る標識の規制方向推定が可能か複数のAIチャットボット (Claude Opus 4,Gemini 2.5 Pro,ChatGPT o3/o4-mini-high )を用いて検証した.既往研究で用いた画像と同地点のGoogle Street Viewのキャプチャ画像を読み込ませた結果,ChatGPTにおいてすべての車両規制方向推定に成功した.
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高橋 悠太
2025 年6 巻3 号 p.
108-120
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
土木分野におけるデータ化において,既にある筆記データを電子化する場合などで転記ミスが生じ,データフォーマット間でデータが一致しないことがある.データ化を進めるほどこのような不一致は増え続けることが予想されるが,同時に増え続けると予想される不一致の条件を列挙し,アルゴリズムによって対応することは現実的でない.既往研究ではいくつかのAIチャットボットを用いてそれぞれ検討がされていたが,最新のモデルで統一されたプロンプトと基準を用いた比較検証がなされていなかった.本研究ではAIチャットボットがそれぞれ持つ特性に対し,xROADにおける不一致データの検知能がどのように異なるか,特にChatGPTのo3/o4-mini-highモデルで比較検証を行った.既往研究で検討されたClaude Opus 4に加えてGemini 2.5 Proについても同条件で検討を行い,現段階ではシステム上の問題によってChatGPTでの検証と同様の結果を得ることが困難であることを示した.
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星 蒼, 峯啓 一郎, 川尻 峻三, 松田 虎弥太, 廣岡 明彦
2025 年6 巻3 号 p.
121-130
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,土試料の含水比を簡便に推定する手法として,食紅による着色前後の撮影画像から着色による輝度ヒストグラムの変化率を求め,含水比との相関を分析した.撮影時の周辺光の影響を評価するため,遮光の有無による比較を行い,変化率が周辺光に大きく依存することを明らかにした.また,乾燥密度を一定とした実験では,変化率と含水比の間に明確な負の相関が得られた.一方で,乾燥密度を調整しない実験では,含水比の増加に伴って変化率に極小値が現れ,これは乾燥密度と保水性の関係を反映している可能性がある.これらの結果より,着色による変化率は土の乾燥密度や透水係数と密接な関係を持つことが示唆された.本手法は現場における省力的かつ迅速な含水比評価手法としての実用化が期待される.
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松本 裕樹, 森井 広樹, 陳 喩, 坂本 俊太, 井口 重信, 全 邦釘
2025 年6 巻3 号 p.
131-138
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
コンクリート構造物の点検への点群データの活用が進んでいるが,これまでは,トンネルや橋梁といった構造物の場合,地上などから商精度・高密度な点群データを取得できず,微細な損傷の検知が難しかった.しかし,近年活用が進むUAVなどでは対象物に近接して画像を撮影できるため,精度の商い商密度な点群データを取得できる.そこで,本研究では,コンクリート構造物の浮きや剥離等の内部の損傷を,UAVのカメラで撮影した動画からStM, MYSにより生成した点群・3Dメッシュデータを解析することで,浮きや剥離箇所の検知可能性を検討したその結果,改良したRANSAC法によるノイズを除去した点群データにより奥行き方向解析およびメッシュの法線ベクトルの解析を組み合わせることで,浮きや剥離箇所の検出可能性があることを示した.
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西内 裕晶, 片田 倫平, 坪田 隆宏
2025 年6 巻3 号 p.
139-147
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
現在の京都市は交通渋滞が喫緊の課題であり,リアルタイムの渋滞状況等は情報提供されているが,課題の解決には至っていない.一方で,近年ETC2.0プローブ車両が増加し,高密度な交通流の観測が可能となっている.特にバスは,定時刻かつ定路線で運行するため安定したデータの観測が可能となっている.そこで本研究では,ETC2.0バスプローブデータを活用し,学習モデルによって将来起こる渋滞を予測することで課題の解決を目指す.本稿では,ETC2.0バスプローブデータを用いた渋滞予測手法を構築した.その結果,1週間後の渋滞をある一定の精度で予測できることを示唆した.また,渋滞が深刻な路線では,ETC2.0バスプローブデータを用いれば,高い精度で予測できる可能性を示唆した.
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白野 洸斗, 重松 康祐
2025 年6 巻3 号 p.
148-153
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,走行時の移動ロボットの安全性向上を目的として,走行中に発生する衝撃や振動を事前に予測するシステムを提案する.災害現場や危険地域で活用される移動ロボットは,不整地走行による振動や衝撃で転倒やセンサ故障や誤検知を引き起こす恐れがある.これにより,得られる地形情報に誤差が生じ,マッピング精度の低下を招くおそれがある.本システムは,CNNおよびLSTMを用いて深度カメラ,IMU,クローラのエンコーダのデータから近い将来の加速度の合力の最大値を高速に予測するものである.実験の結果,推論時間は約5.06 ms,予測誤差は0.98 m/s2であり加速度を高精度かつ高速に予測できることを確認した.今後は実機による検証が課題であり,不整地における移動ロボットの信頼性向上が期待される.
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佐藤 拓人, 宮本 崇
2025 年6 巻3 号 p.
154-168
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年の日本においては,豪雨の増加により水害のリスクが増加するとともにその被害規模が甚大化している.大規模な水害時の被害全容を早期に把握する手段として衛星画像の活用が期待されており,深層学習を用いた衛星画像からの洪水浸水域検知に関する研究がこれまでに行われているが,検知精度の向上やAIの推論結果の物理的妥当性の担保が必要となっている.本稿では,これらの課題の解決を目的として,深層学習モデルによる浸水域セグメンテーション結果に対して,地形情報に基づく補正手法を検討した.試行結果からは,地形情報に応じて浸水判定を増やす処理を加えることでIoUなどの値に影響を与えずにrecallが高くなる,浸水域を見逃しにくくなる結果を得た.
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篠原 由樹, 西内 裕晶, 薄 雪晴
2025 年6 巻3 号 p.
169-182
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
高知市では公共交通の利用促進・定着のため,2022年11月3日から2023年1月29日までの日曜・祝日・年末年始において「日祝電車・バス等運賃ワンコインデー(10円デー)」が実施された.本研究では,10数年程度蓄積されたICカードデータを用いて,利用者を公共交通利用の過去の行動特性に基づき,休眠化,離反傾向,安定利用の3つに分類し,割引施策実施前後の公共交通の利用頻度の変化を把握した.また,利用頻度の変化の特性に応じて利用者をさらに分類し,利用者の特徴を時間的・空間的トリップパターン依存度により把握した.その結果,10円デー前に公共交通の利用が見られなかった利用者について10円デー実施後に公共交通の利用が確認され,日々異なる時間・空間パターンで移動をしていることを把握した.
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野津 秀太, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 大屋 誠
2025 年6 巻3 号 p.
183-195
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
我が国では老朽化したインフラ構造物の増加に伴い,適切な維持管理が求められている.道路構造物では5年に一度の点検が義務付けられており,損傷の状態や構造物の評価を所見として記録する必要がある.しかし所見作成は高度な専門知識を要する作業であり,人手不足や技術的な負担が課題となっている.近年,点検の標準化・効率化を目的として,AI技術を活用した自動化の試みが進められている.本研究では,画像言語モデルと大規模言語モデルを用いて,点検時に撮影された画像から所見,問題点,原因,補修方法を含む所見文を生成するシステムの構築を試みた.その結果,画像言語モデルによるキャプション生成のプロセスにおける損傷種別の判別精度が8割程となり,生成されたキャプションに基づく所見文の自動生成も可能であることを確認した.
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砂原 啓人, 作中 隆之, 恩知 憲正, 道川 貴成, 武石 洋平, 髙見澤 拓也
2025 年6 巻3 号 p.
196-203
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,老朽化が進むインフラの中でも特に調査が困難とされる暗渠水路に着目し,水流を利用して自走する浮体型装置を用いた気中撮影による三次元化手法について検討を行った.装置には上部にカメラを搭載し,水路内の画像を取得して三次元点群を構築するが,浮体は水流の影響により水路断面内で横方向に位置が変動する.これにより,撮影時のカメラと水路上面との距離が変化し,得られる三次元化精度にも影響を与えることが予想される.検証では異なる撮影位置および移動条件下で三次元点群を作成し,精度を比較検討した.その結果,特に移動速度が高い場合に撮影位置の違いにより点群生成範囲の差異が顕著に表れることが確認され,撮影位置や移動条件が大きく影響を及ぼすことが明らかとなった.
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福井 智大, 黒田 一郎
2025 年6 巻3 号 p.
204-213
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究は,オートエンコーダを用いた打音による鉄筋腐食判定において,打音データ収集時のハンマの衝撃力と,オートエンコーダの中間層ノード数が判定結果に及ぼす影響について,電食により鉄筋を腐食させたRC供試体を用いた実験によって検討を行ったものである.その結果,適切な中間層ノード数を設定すれば,教師データとテストデータ間でハンマの衝撃力が食い違う場合でも,悪影響を受けることなく正しく鉄筋腐食の有無を判定できることを確認した.また,中間層ノード数が過多な場合には衝撃力の違いに関する影響を捉えるノードが増えることで判定性能が低調となることを確認した.
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王 欣, 党 紀
2025 年6 巻3 号 p.
214-219
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究は、UAV(無人航空機)で撮影した画像から生成された3次元点群モデルを用いて、災害時に発生する瓦礫等の堆積物の体積を精度良く推定する手法を検討したものである。段ボール箱を用いて構築した人工的な堆積物を対象に、UAVの飛行方式(高度・経路)、点群モデルの生成方法、地面推定時のパラメータ設定が体積推定結果に与える影響を実験的に分析した。撮影方式やモデリング手法によって体積の推定値やばらつきに有意な違いが認められ、特にタイルモデルへの平滑化処理が推定精度の向上に有効であることが示された。本研究成果は、災害後の迅速かつ正確な瓦礫量推定に資する技術的知見を提供するものである。
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佐藤 公洋, 森 篤史, 箱石 健太, 一言 正之
2025 年6 巻3 号 p.
220-231
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
土の粒度分布は粒径加積曲線で表せるが,粒径加積曲線を求めるためには粒度試験を実施する必要があり即時には完了しない.また,粒度試験を行わない手法として深層学習を用いた粒度分布推定手法が提案されているが,多くの訓練データ・学習時間・学習コストを要する点や,礫混じりの土に対応していない点で課題が残されている.本研究では,学習済のVision Transformerを使用し,少ない学習データで粒径加積曲線近似式のパラメータを推定する手法を構築する.提案手法では,土の分類に応じてパラメータ回帰モデルを使い分け,礫混じりの土にも対応する.土表面の画像に対して提案手法を適用し,短い学習時間で精度良く粒径加積曲線近似式のパラメータを推定できること,および礫混じりの土でも粒度分布を推定できることが確認された.
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岡地 朋香, 野村 泰稔, LIN CHENGFENG, 高田 守康, 花坂 弘之, 永井 利幸, 戸部 浩, 吉田 美由紀
2025 年6 巻3 号 p.
232-239
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,道路脇の被り枝およびその被り枝に引っかかる枯れ枝を対象とし,車載カメラ映像に深層学習を適用することで,点検システムの開発を目指した.具体的には,物体検出モデルであるYOLOを用いて被り枝を検出し,次に画像分類モデルによって枯れ枝の有無を判定する二段階の処理を行った.また,枯れ枝の教師データ不足に対しては,画像生成AIを活用して多様な環境条件を再現した画像を生成し,分類モデルの精度向上を図った.さらに,検出結果を地図上に可視化することで,危険箇所の空間的な把握と作業計画の最適化を可能にした.これらの結果から,物体検出・画像分類・画像生成AI・地図可視化を統合した本システムは,今後のインフラ維持管理業務における作業負担の軽減と安全性の向上に貢献する可能性が示された.
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国場 有沙, 神谷 大介, 平野 順俊, 澤口 侑, 大月 庄治, 山本 忍, 小宮 涼, 庄司 康太, 浅野 達海, 今井 龍一
2025 年6 巻3 号 p.
240-246
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,課題とされるオーバーツーリズムに対して,自然環境を観光資源とする地域における持続可能性を確保するために,包括的なモニタリングの結果に基づいたマネジメントが求められている.特に登山道では,登山ブームにより利用者が増加しエコツアールートとして利用される一方で,踏圧による植生の後退をはじめ自然環境への負の影響が懸念され,さらに管理者不足やモニタリングの課題が残る.そこで本研究では,近年,多様な分野で活用されているLiDARを,植生の進退を測る登山道経年変化計測の1次スクリーニングに適用する.西表島浦内川の登山道を対象とし,2時期の3次元点群データを重畳し,幅員方向の差分を算出した.この結果より,幅員方向の植生の変化を可視化でき,LiDARの適用可能性を示すことができた.
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三好 夢珠, 笠間 清伸
2025 年6 巻3 号 p.
247-254
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,気候変動の影響により土砂災害の激甚化が懸念されており,その発生傾向を地域ごとに詳細に把握することが重要である。本研究では,1983年から2022年までの地すべり発生データを対象に,都道府県ごとの傾向を分析するため,最大1時間降水量および経過年数を説明変数とする階層ベイズモデルを構築した.ゼロの多い地すべりデータの特性に対応するために,ゼロ過剰負の二項分布を採用し,構造的なゼロと偶然的なゼロの発生を統計的に区別した.統計解析の結果,7つの都道府県において地すべり発生数の増加傾向が確認され,地域ごとの発生リスクの違いが定量的に把握できた.最も増加傾向の見られた岩手県では,年間地すべり発生回数がゼロでない割合(非ゼロ確率)は1983年で44.2%,2050年で80.8%と予測された.本研究で得られたモデルは,将来的な降水変動に基づいたリスク予測にも応用可能であり,地域別リスク評価への活用が期待される.
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田中 光莉, 板倉 健太, 大竹 憲邦, 斎藤 嘉人
2025 年6 巻3 号 p.
255-265
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
モモ果実の品質保証の観点から,渋味の非破壊評価法の確立が求められている.本研究では,蛍光分光法と次元削減手法を組み合わせ,モモ果実の渋味を分類するスクリーニング手法の構築を目的とした.モモ果皮表面の励起蛍光マトリクス (EEM)の測定,および渋味に関連する成分含量の計測を行った.得られたEEMデータに対して,主成分分析 (PCA)やt分布型確率的近傍埋め込み法 (t-SNE)による次元削減を行い,各特徴量を入力としたサポートベクターマシン (SVM)を用いて渋味の分類モデルを構築した.その結果,全ての品種を一括で用いた分類モデルでは50–70%台の全体精度となり,品種ごとにデータを分割して構築したモデルでは,いずれの品種においても80%以上の全体精度が得られた.以上より,蛍光分光法によるモモ果実における品種別の渋味スクリーニングの可能性が示唆された.
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柴田 涼矢, 尾﨑 平, 窪田 諭, 安室 喜弘
2025 年6 巻3 号 p.
266-274
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,熱中症患者数の増加傾向が続いており,市民への注意喚起が重要である.環境省が発信する暑さ指数情報は各都市域の代表値であり,屋外で活動する市民個別の環境には必ずしも当てはまらない.既往研究では,都市の3Dデータと太陽軌道を用いてCG化した陰影から地表の日射量を求め,さらに輻射熱との相関から暑さ指数を推定し,ヒートマップ状に熱中症リスクを可視化しているが,照光条件が単純な快晴時にしか適用できない.本研究では,必ずしも晴天時に限って熱中症リスクが高いわけではないことを重要視し,容易に得られる気象情報から直達日射と天空日射を推定し,CGにおける照光条件として再現可能にすることで,多様な気象条件下において地表での詳細な暑さ指数を推定する手法を提案する.
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登石 光士郎, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
2025 年6 巻3 号 p.
275-286
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究は,橋梁の健全性判定において,著しく不均衡なデータ下での高精度な分類モデルの構築が可能か検証する.橋梁点検データは,重大な損傷を示す「IV: 緊急措置段階」の画像が極端に少なく,通常の学習では,AIモデルの予測が多数クラスに偏る課題がある.そこで本研究では,画像認識で広く用いられる基盤モデルのファインチューニングにおいて,データ不均衡問題への有効性が知られるFocal Lossとデータ拡張を組み合わせ,その相乗効果を橋梁データセットにおいて網羅的に検証する.実験では,これらの既存技術の有無による性能を定量的に比較分析した.その結果,両技術の組み合わせが「IV: 緊急措置段階」を含む少数クラスの分類精度を大幅に向上させ,モデルが重大な損傷を見逃すリスクを低減できることを実証した.この結果は,既存技術の組み合わせが,橋梁点検という実社会の課題の解決に有効であることを示している.
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中山 龍也, 山口 歓太, 一言 正之, 樫山 和男
2025 年6 巻3 号 p.
287-295
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本論文は,従来の数値解析による氾濫域予測の代替手法として,深層学習と次元圧縮技術を組み合わせた浸水域予測手法を提案し,その汎化性能および予測精度の向上について検討を行ったものである.次元圧縮手法として,特異値分解(SVD),非負値行列因子分解(NMF),およびオートエンコーダ(AE)を採用し,深層学習手法としては,DNN,RNN,LSTM,GRUを用いた.DNNを用いた浸水域予測手法は荒川の浸水シミュレーションに適用し,リアルタイム性と精度の両面から手法の妥当性を検証した.また,浸水域の時間的変化を考慮するために時系列処理に適したRNN,LSTM,GRUの適用も行った.その結果,約22万次元の浸水域データを10次元まで圧縮しても高精度かつ高速な予測が可能であり,特にNMFは精度と計算効率のバランスに優れることが確認された.また,LSTMはDNNと比較して予測精度の向上に寄与することが確認された.
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大場 宏樹, 木戸 俊太, 佐々木 優輔, 杉本 悠真, 大西 弘志
2025 年6 巻3 号 p.
296-302
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究は,耐候性鋼材の維持管理技術の高度化を目的として,デジタル画像解析により保護性さびの色とさび層厚さの関係を定量的に評価した.橋梁から撤去した耐候性鋼材のさび表面を撮影し,OpenCVを用いてHSV色空間に変換することで色情報を抽出した.その色情報と実測さび厚との相関を調査した.その結果,本データセット内では明度とさび厚さにある一定の相関があることが示唆された.
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高石 柚哉, 山田 真史, 堀 智晴
2025 年6 巻3 号 p.
303-315
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
日本全国の自治体公式ウェブサイトを対象に,ハザードマップ掲載ページへの到達経路を分析した.手動探索およびWebクローリングを用い,クリック数・語彙・構造の3点から経路を検討した結果,9割以上の自治体でトップページからクリック数3以内で到達可能である一方,人口の少ない自治体では多くのクリックを要する傾向が確認された.また「防災」「くらし」などの語彙の出現はクリック数に応じて傾向がみられ,構造面では経路が直線型・ツリー型・集約型などに分類された.また最短経路構造の縮約を行い,約2割の自治体でハザードマップを見つけにくい構造が存在していることが分かった.これにより,防災情報発信の特徴を体系的に把握でき,より到達しやすい情報設計への示唆が得られた.
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木村 延明, 皆川 裕樹, 木村 匡臣, 吉永 育生
2025 年6 巻3 号 p.
316-323
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年注目を集める物理情報を導入した深層学習モデル(PINN)は,観測値がない地点でも物理法則と近隣の観測値を用いれば,良好な再現計算が可能である.しかし,農業水利施設の排水路の流況を対象にPINNを適用するためには,水路の合流を考慮する必要がある.そこで,水路の合流情報を表現可能なグラフ埋め込み機能をPINNに導入すること(GPINN)で,水路の合流点の流況を計算可能にする.人工的に生成された複数の洪水事象の流況(水深・流速)をGPINNで再現計算した結果は,事象によって再現性の課題はあるものの,良好な結果が得られたケースでは,合流点の水深変化を概ね再現することができた.
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山本 雄平, 寺口 敏生, 中村 健二, 直井 友希, 中田 諒, 川﨑 雅和, 今井 龍一
2025 年6 巻3 号 p.
324-337
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,さまざまな交通安全対策が実施されているものの,依然として交通事故件数は多く,対策の強化が急務である.特に都市高速道路では,分合流部における車両の錯綜が事故の要因となることから,こうした事故危険箇所の把握が重要となる.この一対策として,走行軌跡を把握できるプローブデータが活用されている.既存研究では,走行車線の推定に向けて,プローブデータに含まれる挙動履歴から車線変更を推定する手法が提案されている.しかし,道路構造や走行速度によって車両挙動が変化し,推定精度が低下する課題がある.そこで本研究では,都市高速道路の直線区間を対象に,民間プローブデータから車線変更を推定する機械学習手法を考案した.提案手法は,9割を超える精度で実際の車線変更を推定可能であり,直線区間における有用性が示された.
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庵原 康世, 佐竹 祐里奈, 和泉 勇治, 子田 康弘, 中村 和樹
2025 年6 巻3 号 p.
338-347
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,橋梁の老朽化が進行する中で,点検作業の効率化が求められている.本研究では,福島県の道路橋点検結果の状況写真を元にしたトレーニングデータを用いて,CNNによる腐食検出器となる学習モデルを構築した.本研究においては,2地区のトレーニングデータを統合し,画像の輝度変化に着目した前処理を適用した上で学習を行った.現地調査結果に基づくテストデータを用いた評価の結果,腐食,塗膜変状,判定対象外の各クラスにおいて異なる前処理が好適であり,腐食,塗膜変状,判定対象外にはそれぞれコントラスト低減,ヒストグラム平坦化,コントラスト強調を施したトレーニングデータを用いて学習したモデルを構築することにより,本論文で検討した範囲においては分類精度を最大限に高めることができることが判明した.
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羽物 裕人, 大川 博史, 樫山 和男
2025 年6 巻3 号 p.
348-358
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本論文は,国土地理院の航空写真を用いた深層学習ベースのセマンティックセグメンテーションにより土地利用分類モデルを構築し,津波シミュレーションへの適用を通じてその有効性を検証したものである.従来の土地利用細分メッシュ(100m解像度)に比べて,約30cmの高解像度データを自動生成することで,水害シミュレーションや都市開発における土地利用情報の高度かつ効率的な活用を目的とした.分類精度の向上のため,PSPNetにAttention機構を導入し,クラス不均衡問題への対応を図った結果,従来手法を上回る分類性能を実現した.また,未学習データの2地域における汎化性能評価により,異なる地域特性に対するモデルの汎化性能を検証した.さらに,本手法を津波シミュレーションに適用し,従来の目視判読に基づく手法と比較して処理効率を大幅に向上させ,津波遡上解析における水際線の予測精度においても正解ラベルと同等であることを示した.
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松坂 拓樹, 山本 佳士, 尾関 智子, 上田 隆雄
2025 年6 巻3 号 p.
359-366
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,コンクリート構造物の塩化物イオン濃度等を効率的に評価可能な手法として,近赤外分光法を用いた手法が注目されている.既往の研究では,特定波長の吸光度を用いた回帰による推定が主に行われていた.本研究では,近赤外分光法による塩化物イオン濃度等の推定に対する汎用的な手法の確立を目的として,ケモメトリクスを用いて吸光度スペクトル全領域のデータを使用して回帰し推定する手法に関する基礎的な検討を行った.具体的には,ケモメトリクスでの一般的なデータ前処理方法と,主成分回帰の適用性および,各種前処理パラメータ等が推定精度に与える影響を検証した.検証の結果,複数の主成分スコアを用いて高精度での推定が可能であり,また前処理パラメータが推定精度に与える影響は大きく,適切に最適な変数を導く必要があると分かった.
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平岡 伸隆, 井出 真朱, 伊藤 和也
2025 年6 巻3 号 p.
367-379
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究ではデジタルツインを志向した斜面掘削現場の安全管理を目的に,面的・非接触で変位を捉える準リアルタイム三次元点群生成と異常検知手法を提案する.固定カメラによるインターバル写真から,(1) COLMAP + openMVS,(2) Metashapeの二構成でSfM-MVSを実行する運用フローを構築し,実装可能性を議論した.その結果,各時刻の位置合わせ済みの点群生成時間は162秒と183秒で,約3分遅延で高密度点群を継続更新できた.得られた時系列点群差分を深度画像に変換し,ピクセル差分を時系列解析することで崩壊予兆を視覚化・定量化し,自動異常検知の有効性を確認した.従来のセンサ観測では設置箇所を代表点とした計測であったが,本研究によって面的な変位情報が得られた.
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吉田 将規, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
2025 年6 巻3 号 p.
380-392
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本稿では,道路情報に関するオペレータ業務の補助を目的として,通報音声から道路に関する事象が発生している地点を予測する手法を提案する.通報への対応を行うオペレータは,通報者から口頭で伝達される情報と管理地域の地理情報を照らし合わせることで,事象の発生地点を特定することが求められる.本業務の補助として,通報音声から地点の特定を行う手法を構築することで,オペレータの負担軽減および業務効率改善が期待される.本研究では,リアルタイム性を考慮した音声認識や通話内容の要約保持技術を構築する.このとき,地点予測に必要となる地名データを学習するために,音声認識モデルのfine-tuningを行うことで,大規模言語モデルに基づく地点の予測を行う.また,実際の業務において取得された通報音声を用いた実験を行うことで,提案手法の有効性の検証を行う.
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太齊 蓮, 李 想, 五箇 亮太, 斉藤 直輝, 前田 圭介, 鎌田 文幸, 久保 竜志, 川嵜 裕二, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
2025 年6 巻3 号 p.
393-405
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
少子高齢化に伴う技術者不足が進行していることから,高速道路の維持管理業務ではAIによる点検支援の実現が急務である.従来のAIを用いた道路附属物や植生等の異常検出においては,対象ごとに個別のモデルを構築することが一般的である.しかしながら,検出対象の異常は多岐に渡るため,その全てに対して個別にモデルを構築・運用することは実用上大きな制約となる.そこで本研究では,道路附属物や植生を対象とする高速道路上の複数の異常を単一モデルで検出することを目指し,Multimodal Large Language Modelを車載カメラ映像からの異常検出に適用することで,複数種類の異常を対象とした検出方法の実現可能性を検証する.本稿の最後では,東日本高速道路株式会社が保有する車載カメラ映像を用いた異常検出の精度の検証を行う.
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川村 純, 菅田 大輔, 箱石 健太
2025 年6 巻3 号 p.
406-419
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
建設土木分野の実務段階では,生成AIが特定の資料に基づいて質問回答を行うRAG(Retrieval-Augmented Generation)の試行・導入が進められており,RAGの評価方法の確立が求められている.今日では,省力的な評価方法として,RAGの回答を生成AIに評価させるLLM-as-a-judgeが注目されており,人手評価との比較を通してこれを検証する試みが行われてきた.しかし,人手評価は再現性が乏しいため,LLM-as-a-judgeの検証が難しいという問題がある.そこで本研究では,LLM-as-a-judgeの評価能力を,仮説検定における信頼水準と検出力として表現し検証する手法を検討した.これにより,人手評価との比較を行わず,LLM-as-a-judgeを統計的に検証することが可能となった.
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渡邉 健太, 荻野 俊寛
2025 年6 巻3 号 p.
420-426
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
泥炭は有機質相と無機質相からなる重三相構造を呈し,その混合比が地盤の力学的・物理的特性を大きく左右する.しかし,有機質相の構成要素である植物遺骸は多様性があり,自然含水比の広範なばらつきをもたらしている.本研究では,地盤調査によって得られる限られた自然含水比データから,泥炭地盤における自然含水比の 2 次元空間分布を高精度に推定する手法を提案した.推定には,動径基底関数を基底とする CP(Canonical Polyadic)分解に基づくテンソル解析と,非負の確率密度関数を誤差関数とした一般化モデルを用いた.その結果,提案手法は観測データを良好に再現し,泥炭の自然含水比ばらつきを適切に表現できることが示された.
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水野 千里, 党 紀
2025 年6 巻3 号 p.
427-434
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
日本は地震多発国であり,震災後の道路・橋梁の迅速な点検と復旧は重要である.特に都市部では高度経済成長期や関東大震災後の震災復興橋など老朽橋梁が多く,被災リスクが高い.近年,ドローンや AI画像解析など DX 技術の導入が進みつつあり,緊急調査や定期点検の効率化が期待されるが,人材・予算面の課題も残る.本研究では地方自治体における震災後の橋梁の緊急点検と定期点検の効率化について DX 活用方法を検討する.
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矢端 伸一朗, 坪田 隆宏, 吉井 稔雄, Jian XING
2025 年6 巻3 号 p.
435-442
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,高速道路における交通事故リスク予測の高度化を目的として,ETC2.0 プローブデータによ る車両軌跡図と気象データを統合した AI モデルを構築し,特に風速および風向の事故リスクへの影響を定量的に評価した.対象は東名高速道路の一部区間とし,2020~2021 年の交通事故,交通流,気象データを用いて風の成分別(向風・追風・横風)の事故リスクを分析した結果,横風では施設接触・横転事故,向風・追風では追突事故など特定の事故形態との関連性が示唆された.構築した深層学習モデルに気象変 数を追加することで,予測精度はベースラインモデル(F 値 0.195)に比べ最大 0.241 まで向上した.これにより,風の影響を考慮することで実用的かつ説明性のある事故リスク予測が可能となることが示された.
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坪田 隆宏, 安延 健志, 吉井 稔雄
2025 年6 巻3 号 p.
443-451
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,トンネル灯具の正面部の劣化度と設置環境要因を用いて,灯具背面を含む他部位の劣化度を推定する AI モデルを構築した.特に近年,走行車両からトンネル壁面や道路設備の撮影技術が発展しており道路設備状態の効率的な把握が可能になりつつある.本研究はこのような画像診断技術との連携可能な診断支援の実現を目的とする.四国全域の 94 トンネル・約 47,000 灯に対する約 19 万件の点検データを活用し,多層ニューラルネットワークを用いた部位別モデル(4 種)を構築した.結果として,naïve 推定と比較して全体的に高精度な推定が可能となり,特にヒンジ・ラッチおよび CR 取付金具では正解率が 0.90,0.81 と良好で,危険側誤判定も 10%未満に抑制された.一方,CR 本体の推定精度には課題が残るため,今後は入力要因の拡充やモデル構造の改良が求められる.
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山田 航大, 久保 栞, 吉田 秀典
2025 年6 巻3 号 p.
452-460
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
近年,日本では豪雨災害の頻発により,災害発生時における道路の通行可否情報が不足しており,最適な避難経路・避難場所の判断が困難であるなど,避難時のリスク軽減が喫緊の課題となっている.本研究は,避難行動を多角的な視点から支援するため,Web ベースの避難支援システムを構築した.本システムでは,GPS を用いた現在地取得機能や浸水道路を回避する避難経路探索機能,および経路上の標高差算出機能の統合を行った.これにより,避難者は浸水状況や標高差などの情報に基づき,より迅速かつ安全な避難行動の意思決定が可能となる.さらに,佐倉市および高松市における浸水道路を回避した経路探索に係る有効性の検証により,本システムが浸水道路を回避した安全な経路を提示し,現在地の把握や標高差の考慮を通じて避難場所選択の支援として有効であることを確認した.
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神前 真桜, 松岡 弘大, 前田 梨帆, 高橋 和樹, 貝戸 清之
2025 年6 巻3 号 p.
461-469
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
鉄道の保守省力化に向けた有効な手段の一つとして,列車前方画像と機械学習の活用が進められている.しかしながら,保守に多くの人工を要する継ぎ目ボルトやレールボンドは前方画像上に一部しか映らず不 鮮明であるため,機械学習による検知や種別・状態の判定はこれまで実現していない.本研究では,特に種別によって寿命差が大きいレールボンドに着目し,高精細な地上撮影画像を用いて深層学習モデルを事前学習し,その後,前方画像によってファインチューニングを行うことで,不明瞭な前方画像に基づくレールボンド種別の判定精度の向上を図る.実路線での検証の結果,提案手法は,前方画像のみで学習した場合と比較して,レールボンド種別の判定精度が 25%向上することを明らかにした.
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馮 鈺虎, 前田 圭介, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
2025 年6 巻3 号 p.
470-478
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,橋梁点検画像を対象とした連合学習における地域毎のデータの非独立同一分布(Non-IID)問題を克服するため,「動的適応正則化項(Dynamic Region-Adaptive Proximal Regularization, DRAPR)」 を導入した連合学習技術を提案する.連合学習は,各地域組織(クライアント)が自データをローカルに保持したままモデルを学習し,その更新パラメータのみをグローバルモデルに送信することで,データを外部に移転せずとも認識精度を向上させる手法である.しかしながら,地域毎に出現する損傷の頻度が異なるなど,Non-IID 環境下では,モデルの収束性や汎化性能が著しく低下することが知られている.従来手法では,全クライアントに対して固定強度の正則化項を付加し,ローカルモデルとグローバルモデルの乖離を抑制している.一方,DRAPR は,クライアントごとのラベル不均衡度と局所勾配差分を組み合わせて算出される「Non-IID 強度スコア」に基づき,各クライアント固有の正則化係数をラウンドごとに動的に更新する仕組みを導入する.全国道路施設点検データベース(xROAD)の橋梁点検画像を用いた損傷分類実験の結果,DRAPR は比較手法を一貫して上回る精度・再現率・適合率・F1 スコアを達成し,特に Non-IID が強い環境下での収束速度および汎化性能において有意な改善を示した.
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前田 圭介, 佐藤 雅也, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
2025 年6 巻3 号 p.
479-488
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
Multimodal Large Language Model(MLLM)は様々な分野で応用が進んでおり,インフラ維持管理においても,対象データを用いた Instruction Tuning により,専門知識に基づく推論が可能となっている.しかしながら,十分な学習データが得られない環境では,「どこに注目して判断すべきか」といった領域情報を MLLM に明示的に学習させることは困難である.そこで本研究では,画像とプロンプトに加えて,推論時に注目すべき領域を入力として指定し,その領域の影響が MLLM の出力に強く反映されるよう,潜在表現を最適化するVisual Prompt Learning を導入する.本手法により,従来の画像・プロンプトのみを用いた MLLM と比較して,対象領域へのアテンションを誘導し,高精度な推論が可能となる.本手法は MLLM自体のパラメータを更新する必要がなく,注目領域と画像を用いた大規模な学習も不要であることから,実運用に適したアプローチである.xROAD に蓄積された橋梁点検データを用いた実験を通じて,提案手法の有効性を実証した.
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齋藤 成津美, 塩尻 大也, 小槻 峻司
2025 年6 巻3 号 p.
489-496
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
降水予測は防災上,数時間先の予測精度が重要となる.特に 6 時間先の予測は防災のためのリードタイ ムの確保のために有用であるが,不確実性の定量化のためのアンサンブル生成は,数値予報モデル(NWP)の場合,計算資源の制限によりアンサンブルメンバー数が限られる.そこで本研究では,高速にアンサン ブル生成が可能な深層学習モデルのうち拡散モデルを適用し,メソ数値予報モデル(MSM)を条件としたポストプロセスにて,6 時間先のアンサンブル降水予測を生成する.統計的検証の結果,MSM に存在する地形性バイアスが軽減され,RMSE,CRPS も改善するなど,予測誤差に対する統計的補正の効果が確認された.これにより拡散モデルによる降水アンサンブル生成がポストプロセスとして有効である可能性が示されたといえる.
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尾田 拓海, 斎藤 久志, 山本 佳士, 尾関 智子, 園田 潤, 木本 智幸
2025 年6 巻3 号 p.
497-508
発行日: 2025年
公開日: 2025/11/11
ジャーナル
オープンアクセス
著者らは,レーダ画像から pix2pix を用いてコンクリート内部の欠陥幾何情報を推定・可視化する手法を開発している.具体的には,まず,人工欠陥を,位置,寸法,角度を変えて配置した供試体を作製してレーダ画像を取得する.取得したデータを pix2pix に学習させ,レーダ画像から欠陥を含む断面画像を推定・可視化する手法である.同手法は,ある程度の推定性能を有するものの,学習データを準備することに多大なコストがかかるという課題があった.そこで本研究では,学習データをペアにする必要のない CycleGAN を用いて,学習データの生成コストの削減を試みた.検証の結果,提案手法は,pix2pix を用いた手法よりデータ生成コストを大幅に削減でき,定性的かつ定量的な評価から同程度以上の推定性能有することが分かった.
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