2025 年 4 巻 1 号 p. 29-37
北海道内のため池の中には,安全性の評価が行われていない個人所有の小規模なため池が数多く存在するが,これらには十分な検討費用がかけられない場合が多いため,補修の必要性や優先性の把握が困難な状況となっている.本研究では,ため池堤体の現況安定性評価で一般的に行われている比較的大がかりな地質調査を行わずに堤体土のせん断強度(c,φ)を決定し,堤体の安定性評価を簡易に行う手法の提案を試みた.北海道内でこれまで地質調査を実施したため池の中から34箇所を抽出して検討した結果,簡易動的コーン貫入試験結果を用いて堤体土のせん断強度を決定し,堤体の安定性評価を簡易に行うことは十分に可能との結論を得た.この結果は,農業インフラの一つである小規模な農業用ため池のメンテナンス性向上に寄与するものと考えている.