2017 年 26 巻 3 号 p. 175-178
不適切な血管内治療(EVT)で重症虚血肢(CLI)を生じる可能性がある.今回,総大腿動脈にステント留置されCLIに至った症例を経験したので報告する.症例は81歳男性で閉塞性動脈硬化症のため他院でバイパス術およびEVTを受けたが,右第2趾潰瘍が生じ当科を受診した.造影CTで右外腸骨–総大腿動脈ステント閉塞,右浅大腿–膝窩動脈バイパス閉塞を認め,症状増悪し手術方針とした.残存する自家静脈が限られたため人工血管で左外腸骨–大腿動脈バイパスの人工血管–右大腿深動脈交叉バイパス術,前述したバイパスの人工血管–膝下膝窩動脈バイパス術を行った.創傷治癒進まず,血管造影で右後脛骨動脈が限局性に閉塞していたため,自家静脈を用いた右後脛骨–後脛骨動脈バイパス術および第2趾切断を行い創傷治癒した.non-stenting zoneへの不適切なステント留置はCLIに至る危険性がある.