抄録
本論文では, 海中発音生物として知られるテッポウエビの発音数観測による浅海域底層環境モニタリングの可能性を, 環境汚濁として貧酸素水塊を取り上げ検討した. 発音数の測定は基本的にはハイドロフォンで水中音響を録音するだけであり, 生物の専門知識も必要なく1~2分で終了する. 2年間の現地調査, 室内実験の結果, 遊泳能力を持たないテッポウエビにとって貧酸素水塊発生は危機的な状態であり, パルス数が激減すること, 環境汚濁の無い状態では水温が発音数の支配要因となることを見出した. また, 環境汚濁や急激な水温変化がなければ短期間内でのパルス数の変動はほとんどないことから, 定点モニタリングでは十分にテッポウエビのパルス数観測が環境汚染の生物影響の直接的な測定方法となることを示すことができた.