2020 年 76 巻 1 号 p. 94-111
本研究は,土木学会デザイン賞で「高次の合理性」「正統派の景観デザイン」といった評価により最優秀賞を受賞した内海ダム事業の評価の特徴と,それを体現したデザインや計画,マネジメント上の特徴との関係を明らかにすることを通して,土木デザイン評価の枠組みや優れた土木デザインの実現に向けた景観検討の役割等に関する議論の発展に寄与することを目的とするものである.成果として「上位計画・設計条件の調整」「新規性」「規範性」をはじめとする内海ダムの評価項目の特徴と,これらの評価と「堤体前盛土」「中尾根残置」等のデザイン上の特徴の関係を明らかにした.またこれらのデザイン上の特徴の実現に対する造成計画など事業早期の検討を含む継続的な景観検討の寄与,および造成計画と景観検討の一体的取り組みの重要性を指摘した.