2014 年 70 巻 2 号 p. I_107-I_114
近年,鋼矢板を用いた農業水利施設の早期腐食が技術的課題となっている.これら施設の再建設や改良の前提として更新工法の開発が喫緊の課題となっている.本研究では,非破壊検査法により,鋼矢板-コンクリート複合材を適用した農業水利施設における補修コンクリート部材のひび割れの定量評価を試みた.損傷度の定量評価には,非破壊検査法の一つである赤外線サーモグラフィー法と空間統計学のセミバリオグラム解析を適用した.セミバリオグラム解析は,物性値の空間分布特性を定量評価する手法である.実証的検討は,ひび割れ損傷が発生した水路施設で行った.検討の結果,セミバリオグラムは損傷度の影響を受けたと考えられる異なるセミバリアンスが確認された.このことから,赤外線画像を用いたセミバリオグラム解析により,コンクリート表層の定量的損傷度評価が可能になるものと考えられる.