抄録
繊維強化プラスチック(FRP)材料は従来の土木材料と比べ優れた点が多いが,母材である樹脂や介在物である繊維材料の有する様々な性質に影響されるため,力学的特性を正しく把握することは容易ではない.FRP材料の設計・開発の際には,材料係数等が既に決まった巨視的な異方性弾性体としてモデル化されることが多く,内部の微視構造が直接考慮されることはない.本研究では,2相材料の問題に仮想母材を導入し3相とした材料に森・田中平均化手法を適用した方法により,実験のFRP供試体について,ビニルエステル樹脂と繊維材料の材料係数の同定を行った.更に,同定値から得られる巨視的材料係数を汎用有限要素ソフトに組み込みFRP積層梁の曲げ挙動を数値的に追跡した結果に基づき,剥離破壊の簡単なモデルを提案した.