抄録
セメント内の支配的構成要素であるCalcium Silicate Hydrate (C-S-H)マトリクスの力学的特性はセメント全体の力学的な特性を決定づけるため,セメントの優れたマテリアルデザインの実現のために重要である.C-S-Hマトリクスの力学的特性の解明には単位構成要素であるGlobulesの力学的特性の解明が重要であるが,ナノスケールの構造を持つGlobulesの力学的特性の解明は困難である.本研究では,Globulesの力学的特性について,分子動力学法(MD 法) を用いた動的な応力‐ひずみ計算をGlobulesの局所構造と報告されている鉱物であるトバモライト14Åとジェナイトに適用した.結果として,トバモライト14Å,ジェナイトともに弾性域での直線的な応力‐ひずみ関係を得ることができた.その結果,弾性特性の温度依存性や,破壊挙動について議論が拡大できた.本計算から得られた結果は弾性特性,破壊特性ともに鉱物内に存在する水層の重要性を指摘するものであった.