2014 年 70 巻 2 号 p. I_397-I_408
近年,台風に伴う豪雨による土砂災害が多発している.これらの土砂災害は,降雨特性ならびに地質構造に応じて発生形態が異なることが指摘されており,崩壊した斜面に関する調査・解析から斜面崩壊メカニズムについて考察された事例研究が数多く報告されている.しかしながら,崩壊斜面を対象として,過去の豪雨で崩壊が発生せず,何故その後の特定の降雨で崩壊したかとの観点に基づく比較検討については,これまでに実施された事例は少ない.そこで本論文では,2009年台風18号の豪雨によって表層崩壊が発生した自然斜面を対象として,地質構造,崩壊土層の詳細調査,分析に基づき,非崩壊時の豪雨と崩壊時の豪雨のイベント時の地盤内の水分状況を二次元飽和・不飽和浸透流解析を用いて推定し,求められた飽和度分布に応じた地盤強度を用いた斜面安定解析から,崩壊メカニズムについて考察している.