抄録
列車の衝撃荷重は,バラスト軌道内部を波動として伝わり,バラスト層特有の鉛直方向の固有振動を引き起こす.その固有振動がバラストの移動や流動などの劣化現象に関与するものと考えられているが,その実態が解明されていない.本研究では実軌道での動的応答測定,実物大軌道模型実験,および,バラスト形状を模擬した大規模有限要素法解析により,バラスト軌道の鉛直固有振動を同定した.有限要素解析において,共有節点により接触点を接続した場合は310 Hz近傍で鉛直方向の弾性振動が発生し,また,非引張ばねにより接触点を接続した場合は,弾性振動の約1/3の周波数でまくらぎが跳ね上がる剛体振動が発生した.解析結果は概ね実測値に符合していた.剛体振動の発生は大きな変位振幅をもたらし,バラスト劣化を促進する可能性がある.バラスト層の接触構造を改善し,バラスト層内部での連続性を確保することにより,剛体振動の発生を抑制し,バラストの劣化を低減できる可能性が示された.