抄録
本論文は三次元弾性波動場の近接場方程式に対して,特性関数を定義する散乱逆解析手法を展開する.方法論そのものはColtonとKirschによって展開されたリニアサンプリング法とその後FataとGuzinaによって導入された近接場方程式を用いる方法に基礎を置いている.この方法では,近接場方程式の解の発散の評価に必要とするコスト関数を用いる複雑な手続きが不要となる.そして,特性関数は近接場方程式に現れる作用素の特異値分解から容易に計算できることに特徴がある.本論文で展開した手法の有効性の検討は,三次元無限弾性波動場中の空洞ならびにクラックの検出問題を通して行う.