2016 年 72 巻 2 号 p. I_187-I_196
本研究では,建物と地盤の動的相互作用問題を3次元有限要素法によってモデル化した際に,効率よく解くための共役勾配法の前処理を提案する.対象モデルでは,建物モデルに梁要素やシェル要素を,地盤にソリッド要素を用いることを想定する.この前処理を提案するにあたっての着眼点は,1) 梁要素やシェル要素でモデル化した建物モデル単体を,疎なコレスキー分解で高速に解ける点,および2) 動的相互作用モデルを共役勾配法で解く際の反復性状の悪化の原因が建物モデルにある点である.実際の数値計算では,建物部分とその近傍の地盤の前処理の求解に,密なコレスキー分解ではなく,疎なコレスキー分解を適用し,計算負荷を低減する.提案前処理を適用することで,代数的な意味において,係数行列から建物由来の成分を除去できる.そのため,建物モデルに含まれる梁要素やシェル要素に起因する反復性状の悪化を回避できると期待される.梁要素でモデル化した超高層建物の動的相互作用モデルを対象とした試計算を実施し,既往の前処理よりも少ない反復回数で精度のよい応答結果を提案法で得られること示す.また,試計算の残差力および残差モーメントを詳細に評価し,既往の前処理に対する優位性を定性的に示す.