2019 年 75 巻 2 号 p. I_571-I_580
鋼部材の CFRP 接着補修・補強工法では,鋼と CFRP が合成断面として挙動することを前提として設計するため,補修・補強区間の両側に定着長を確保する必要がある.さらに,定着長が確保されている場合の定着部のはく離に対する照査はエネルギー解放率を用いている.しかし,鋼橋の腐食は狭隘部や複雑な形状の箇所に発生することが多く,必要な定着長を確保することが困難な場合がある.
本研究では,鋼と CFRP が合成断面となるための定着長が確保できない場合に着目し,定着長が不足している一軸引張を受ける CFRP 接着鋼板のエネルギー解放率の算出方法を検討した.その結果,既存の接着樹脂に生じるせん断応力分布の近似解を用いてエネルギー解放率を算出することで,FEM 解析と同程度のエネルギー解放率が算出できることを明らかにした.