2020 年 76 巻 1 号 p. 22-37
センシング技術とデータ解析手法の発展を背景に,深層学習を代表としたデータ駆動型アプローチの適用が土木工学分野において進んでいるが,計算過程に対する解釈性や物理的な知見の反映の余地など,現象の解析・予測のために求められる課題も顕在化している.本稿では,動的現象に対する数理モデル・データ駆動の統合型アプローチであるクープマン作用素解析の方法論を概説し,数値実験の下でその有効性を示す.また,データ駆動型手法による予測精度の向上が期待されている降水短期予測の問題において同手法の適用を試みる.適用においては,過渡的な現象への適用が原理的に困難であったクープマン作用素解析の性質を考慮して,運動学的解析とクープマン作用素解析の混成による新たな解析手法を提案し,その有効性について検討を行う.