2020 年 76 巻 2 号 p. I_301-I_312
洪水等で生じる洗掘は,大きな地形変化をもたらし,深刻な被害に繋がる.洗掘機構は,従来から掃流力を用いて精力的に評価されてきたが,近年では,流体力は地盤内の応力を変動させ,洗掘現象を助長する影響についても議論されている.本研究では,高速流下の地盤内で生じる浸透及び水圧変動が洗掘に及ぼす影響を定量化するため,移動床実験及び既往の解釈と比較した理論的考察を行った.結果,洗掘現象中に生じる浸透挙動は,洗掘を許さない多孔質固定床で生じ得る理論解とは大きく特性が異なった.特に地盤外へ排水する浸透や液状化等が生じることで,土の安定性を大きく変動させている事を明らかにした.また,粒径や移動床層厚で異なる表層の浸透特性を整理することで,洗掘解析の予測精度を向上させ,効率的・効果的な維持管理に繋がる事を示した.