本研究では,路上落下物などの道路障害物の発生に起因する苦情の発生メカニズムをモデル化する.具体的には,道路障害物の発生過程を定常ポアソン過程,および苦情の発生過程を到着率が道路障害物数に依存する非定常ポアソン過程としてモデル化する.その上で,道路障害物の増加が苦情の発生頻度に影響を及ぼすという階層的関係を考慮するために,道路障害物の発生過程を下位モデル,苦情の発生過程を上位モデルとする階層的隠れポアソンモデルを定式化する.さらに,道路巡回業務や苦情に基づく応急業務を通して獲得した道路障害物の観測データを用いて,階層的隠れポアソンモデルを推計するためのベイズ推計手法を提示する.最後に,一般国道を対象とした適用事例を通じて,本研究で提案した方法論の有用性を実証的に検証する.