抄録
本研究では,ライフサイクル費用とリスク費用の総和で定義されるトータル費用最小化に基づき,長大橋の最適点検間隔を決定するための方法論を構築する.具体的な劣化事象として鋼材腐食に着目する.はじめに,腐食理論式を用いて,部材ごとに鋼材腐食過程のサンプルパスを発生させ,同時に構造解析により腐食量の限界値を算出する.つぎに,サンプルパスの荷重平均に基づく腐食統計モデルを定式化し,それを目視点検データで修正するようなハイブリッド劣化予測手法を提示する.さらに,この劣化予測結果に基づき,1)ライフサイクル費用,2)フォルト・ツリー分析による落橋相当リスクの発生確率およびリスク費用を算出し,最適点検間隔を決定する.最後に,提案手法を実際の長大橋の点検間隔の決定問題へ適用し,その有効性を実証的に検証する.