2015 年 71 巻 4 号 p. I_169-I_180
本研究は、建設技能者はどのように技能を獲得・伝達してゆくのかに関する実態を理解するための第一歩として、これらのプロセスを理解するに資する概念の開発を目的とした。師匠・弟子の関係にある高知県内の二名一組の建設技能労働者から独立して人生史を収集し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで用いられている分析ワークシートの技法により概念を開発した。その結果、【会社に利益を残す仕事】【恐怖への耐性】【しわ寄せの受け手としての下請け】【下級建設会社の誇り】【非制度的昇給システム】【OJTなしの暗黙知伝授】【伝えたい思いと盗みたい思いとの合致】という7概念が生成された。また、これらを用いて二名の人生を描くことで、概念間の関係を例示した。技能獲得・継承ロセスに関する一般理論の構築は今後の課題だが、その理論はこれらの概念を用いて記述されることが期待できる。