2021 年 77 巻 1 号 p. 191-202
1990年代,競争の制限にはダンピングの危険性を低減させ,下請業者に対するしわ寄せを抑制する役割があると指摘されていた.業界による談合決別宣言後,ダンピング対策等を含む入札契約制度改革では,積算基準に依存した価格決定構造が残り,課題を生じさせている.本研究は,欧米の公共調達制度について労働条件の遵守の視点からヒアリング・文献調査を実施し,我が国との制度比較,考察を行った.調査の結果,公正な競争環境の確保を意図し,発注者が受注者に対し労働条件等の遵守を規定する制度により,労働時間・賃金の支払が適切に実施・管理されていることが分かった.考察の結果,我が国の積算基準に依存した価格決定構造が残る入札契約制度の改善策として,発注者が賃金の支払や労働時間の実態を把握することの重要性を示した.