2021 年 77 巻 1 号 p. 172-190
地方自治体が効率的な道路の維持管理を行う上で,包括的民間委託の導入が有効であるとされている.しかし,費用削減効果が得られる可能性が十分あるにもかかわらず,行政職員の意思決定が消極的になる場合がある.本研究では,不確実性下における意思決定理論であるプロスペクト理論に着目し,行政職員の行動特性を加味した包括的民間委託導入に対する効用計算モデルを構築した上で,行動経済学に基づき行政職員の行動特性を特定し意思決定行動の分析を行った.その結果,導入の検討を前提としない状況から導入の検討を前提とするように行政職員の行動変容を促すことが,行政職員に包括的民間委託の導入メリットを感じやすくさせるのに有効であることを示し,そのための具体的な方法としてナッジを提案した.