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松下 文哉, 小澤 一雅
2021 年 77 巻 1 号 p.
1-11
発行日: 2021年
公開日: 2021/01/20
ジャーナル
フリー
近年,i-Constructionの政策のもと,施工現場への情報通信技術の適応が進み生産性向上が期待されている.施工現場から取得した情報(施工管理情報)は施工管理はもちろんのこと,出来形検査にも活用が進められている.しかし情報の改竄確認のために依然として現場で監督官立会のもので行われる臨場検査のプロセスは効率化されていない.本研究では出来形検査の効率化のためブロックチェーンを用いて施工管理情報の非改竄性を担保するシステムを構築し,そのプロトタイプの開発及び実証試験を通して新たな出来形検査システムを提案する.
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中野 敏彦, 宮田 正史, 岩波 光保, 菅原 法城
2021 年 77 巻 1 号 p.
12-25
発行日: 2021年
公開日: 2021/01/20
ジャーナル
フリー
開発途上国のインフラ整備ではその品質を確保するために,設計・施工等の技術基準の整備が重要であり,日本の技術基準の反映は,日本のインフラシステム輸出への寄与も期待される.日本の港湾技術基準について開発途上国をはじめとして国際的な普及展開を目指すため,海外の主な技術基準の国際展開戦略の特徴を整理した上で,目指すべき国際展開戦略を論じた.その戦略の中で,日本の基準をベースに,相手国の自然条件や施工条件等に合うようカスタムメイドにより基準を策定する方法の有用性を示し,ベトナムを対象に港湾設計・施工・維持管理基準を策定した技術移転事例を紹介した.そして,港湾技術基準のカスタムメイドを行う際の基本的考え方を整理し,他の開発途上国にも適用できるようにその方法論の一般化を試み,その留意点をとりまとめた.
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二宮 陽平, 水谷 大二郎, 慈道 充, 貝戸 清之, 小林 潔司, 宮田 亮
2021 年 77 巻 1 号 p.
37-56
発行日: 2021年
公開日: 2021/02/20
ジャーナル
フリー
高速道路高架橋の鋼床版において多数の疲労き裂が発生・進展すれば,鋼床版の疲労耐久性に著しい影響を及ぼす.事後補修を行ったとしても健全性の根本的な回復が期待できない変状や損傷に対しては,発生状況や進展過程を勘案しながら大規模な修繕や更新を視野に入れた維持管理計画を策定する必要がある.本研究では,目視点検では直接観測することが困難な疲労き裂の発生時点を潜在変数として明示的に考慮して,鋼床版における疲労き裂の発生・進展過程を予測するための方法論を開発する.さらに,推定した疲労き裂の発生・進展過程に基づいて将来の修繕費用を算出するとともに,通常修繕箇所と大規模修繕箇所をそれぞれ選定するための枠組みを提案する.最後に,実際の高速道路高架橋の鋼床版を対象として,提案手法の有用性を議論する.
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渡部 太一郎, 小林 薫, 菅野 貴浩, 斉藤 成彦
2021 年 77 巻 1 号 p.
69-82
発行日: 2021年
公開日: 2021/03/20
ジャーナル
フリー
高架下を移設が困難な機器室等に使用している橋脚に対して,機器室等に支障をきたさないように,橋脚側面のみに補強部材を設置して主鉄筋段落し部を曲げ補強する耐震補強工法(側面補強工法)を開発した.本論文では,実橋脚の耐震補強工事における問題点を踏まえて開発に至った背景を示し,橋脚を模擬したRC製の既設部材側面にRC製の補強部材を設置した縮小模型試験体の載荷実験を行った結果から側面補強工法の設計方法を構築した.設計方法の検討に関しては,曲げ補強効果を発揮するために必要なアンカー鋼材量を検討した実験結果を示した.次に,側面補強工法で特有な施工方法を示し,側面補強工法の実橋脚への適用事例を紹介した.最後に,高架下を機器室として使用している橋脚の耐震補強に側面補強工法を適用することによる効果について述べた.
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牧浦 信一, 上出 定幸, 櫻谷 慶治, 奥村 稔, 小田 和広, 松井 保
2021 年 77 巻 1 号 p.
83-95
発行日: 2021年
公開日: 2021/03/20
ジャーナル
フリー
高速道路斜面の予防保全管理のためには,広範囲に分布する崩壊危険斜面や地すべり・土石流危険渓流などを精度良く,効率的かつ経済的に抽出する技術が不可欠であるので、筆者らは広域地盤の3次元比抵抗分布を短時間に求めうる空中電磁探査を導入した.本論文では,空中電磁探査による比抵抗絶対値と強調値表示法および新たに開発した対数比抵抗強調値表示法について述べるとともに,広域地盤性状の概略的把握における有用性について例示した.さらに,崩壊危険斜面の抽出に向けて,比抵抗絶対値(高精度)表示と対数比抵抗強調値(閾値)表示を組み合せた地盤性状区分チャートを提案し,その妥当性および有用性を確認した.この手法が高速道路斜面の予防保全管理を進める上で,広域地盤特性の把握および崩壊危険斜面の抽出に適用できることが分かった.
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貝戸 清之, 小林 潔司, 水谷 大二郎, 二宮 陽平, 河合 良治
2021 年 77 巻 1 号 p.
96-114
発行日: 2021年
公開日: 2021/04/20
ジャーナル
フリー
橋梁は多様な部材によって階層的に構成された複雑な構造システムである.したがって,ある部材の劣化が他の部材の劣化過程に影響を与えるような部材間の関連性を考慮した上で,点検や補修のタイミングを決定する必要がある.本研究では,伸縮装置からの漏水に起因した鋼桁端部の腐食過程に着目する.具体的には,伸縮装置からの漏水の有無に応じて2種類の状態モードを定義し,モードごとに設定したハザード関数を有するスイッチング型のマルコフ劣化ハザードモデルにより鋼桁端部の腐食過程を表現する.同モデルを実データを用いて推定し,漏水の有無による鋼桁端部の腐食進展速度の相違を検証するとともに,伸縮装置止水材の予防保全により,鋼桁端部の腐食進展の抑制と,橋梁全体のライフサイクル費用の低減が可能であることを示す.
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貝戸 清之, 篠崎 秀太, 鎌田 敏郎, 前川 波奈江, 山中 明彦
2021 年 77 巻 1 号 p.
115-134
発行日: 2021年
公開日: 2021/05/20
ジャーナル
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老朽化した下水道管渠が増加傾向にあるなかで,管渠の改築更新工事の効率化が重要視されている.特に管渠は埋設構造物であり,地中で複雑なネットワークを形成するという性質上,ある一定数の工事を集約化するような改築更新工事の水平的同期化施策が有効となる.そこで,本研究ではコンクリート管渠を対象とした目視点検データを用いて混合マルコフ劣化ハザードモデルを推定し,個々の管渠の劣化異質性を評価する.さらに,異質性パラメータ値と管渠の位置情報から空間的異質性分布をデュアル・カーネル密度推定により評価した上で,重点管理区域をスクリーニングするとともに,管渠の改築更新施策を検討するための方法論を提案する.最後に,大阪市が管理する下水道管渠への適用事例を通して,提案手法の有効性を実証的に検証する.
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浜田 成一, 貝戸 清之, 杉原 栄作, 水谷 大二郎
2021 年 77 巻 1 号 p.
135-152
発行日: 2021年
公開日: 2021/07/20
ジャーナル
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社会基盤施設を対象とする公共工事は,時系列的に直轄工事,直営工事,分業化工事という3種類の工事形態に区分される.いずれの工事形態であっても,建設工事を実施するためには,施工管理技術と施工要素技術が求められる.高度経済成長期以降,元請負業者と下請負業者との下請契約を通して,直営工事から分業化工事に工事形態が推移してきた.この過程において,元請負業者が保有していた施工要素技術が下請負業者に移行し,元請負業者が施工管理技術を,下請負業者が施工要素技術を保有する分業化体制が確立した.本研究では,元請負業者の施工要素技術が低下(空洞化)し,それが下請負業者に移行した実態と時期,さらに空洞化が今日においても継続している事実をアンケート調査などの分析を通して明らかにする.
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吉積 尚志, 瀬木 俊輔, 大西 正光, 小林 潔司
2021 年 77 巻 1 号 p.
153-171
発行日: 2021年
公開日: 2021/08/20
ジャーナル
フリー
建設工事では,あらかじめ予期できないリスク事象の発生により,契約で合意された期日までに工事が完成しない場合がある.このような状況の中で,発生した遅延の責任を契約者間で適切に配分する必要が生じる.本研究では,PERTに基づいて遅延責任配分問題の構造を明示的にモデル化し,協力ゲーム理論を用いて複数のアクティビティにおいて発生したリスク事象が最終的な工期遅延に与える影響を評価する.そのうえで,協力ゲーム理論の解の1つである「仁(nucleolus)」を用いた遅延責任配分手法を提案するとともに,現実のプロジェクトにおける遅延責任配分問題を対象として,実際問題への適用可能性について分析する.
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曾川 宏彬, 岩波 光保, 千々和 伸浩, 中山 一秀
2021 年 77 巻 1 号 p.
172-190
発行日: 2021年
公開日: 2021/08/20
ジャーナル
フリー
地方自治体が効率的な道路の維持管理を行う上で,包括的民間委託の導入が有効であるとされている.しかし,費用削減効果が得られる可能性が十分あるにもかかわらず,行政職員の意思決定が消極的になる場合がある.本研究では,不確実性下における意思決定理論であるプロスペクト理論に着目し,行政職員の行動特性を加味した包括的民間委託導入に対する効用計算モデルを構築した上で,行動経済学に基づき行政職員の行動特性を特定し意思決定行動の分析を行った.その結果,導入の検討を前提としない状況から導入の検討を前提とするように行政職員の行動変容を促すことが,行政職員に包括的民間委託の導入メリットを感じやすくさせるのに有効であることを示し,そのための具体的な方法としてナッジを提案した.
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関 健太郎, 堀田 昌英, 市村 靖光, 鈴木 宏幸
2021 年 77 巻 1 号 p.
191-202
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/20
ジャーナル
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1990年代,競争の制限にはダンピングの危険性を低減させ,下請業者に対するしわ寄せを抑制する役割があると指摘されていた.業界による談合決別宣言後,ダンピング対策等を含む入札契約制度改革では,積算基準に依存した価格決定構造が残り,課題を生じさせている.本研究は,欧米の公共調達制度について労働条件の遵守の視点からヒアリング・文献調査を実施し,我が国との制度比較,考察を行った.調査の結果,公正な競争環境の確保を意図し,発注者が受注者に対し労働条件等の遵守を規定する制度により,労働時間・賃金の支払が適切に実施・管理されていることが分かった.考察の結果,我が国の積算基準に依存した価格決定構造が残る入札契約制度の改善策として,発注者が賃金の支払や労働時間の実態を把握することの重要性を示した.
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高橋 智彦, 山田 理紗, 園田 明大, 仁井田 将人
2021 年 77 巻 1 号 p.
203-214
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/20
ジャーナル
フリー
LNG 地下タンクの調達業務において,発注者が保有するノウハウによらず,技術競争による品質向上とコスト縮減を目的とし,性能規定型の技術提案募集を行った.建設コストへのインパクトが大きい躯体の壁厚,底版-側壁の結合方式,鉄筋量については,安全性を確保しつつ過剰な設計となってコストアップの要因にならないよう設計思想を明示し,高いベンチマークを達成した.特に側壁の鉄筋量については,躯体の靱性に依存する設計法を採用し,要求される様々な性能と経済性を高める構造とするように募集要項へ明記した.この結果,要求性能を満足したまま,鉄筋量は既往タンクに比較して40%の削減が可能となった.また,建設費用については,鉄筋量の削減の他,設計・施工の自由度増加によって新たな構造形式などを導入し,大幅なコスト縮減を実現した.
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梶原 拓也, 小澤 一雅
2021 年 77 巻 1 号 p.
215-227
発行日: 2021年
公開日: 2021/09/20
ジャーナル
フリー
建設コンサルタントの設計成果品に関する多くのエラーへの対策として,国土交通省では詳細設計における赤黄チェックの義務化,建設コンサルタンツ協会では,照査・チェックリストの強化等を実施しているが,全設計エラーの解消までには至っていない.また,照査要領にしたがって人間が照査するのは,大きな負担となっている.本論文では,設計エラーの確実な解消と照査効率向上による生産性向上のため3次元モデルを活用した設計照査システムのプロトタイプとして道路の幾何構造に関するエラー解消に資するシステム開発を行い,その有効性を確認した.また,開発に先立ち,道路設計の成果品に関するエラー185事例を分析し,3次元モデルの活用により,概ねすべてのエラーが解消可能であることを確認した.
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高津 光, 五艘 隆志
2021 年 77 巻 1 号 p.
228-242
発行日: 2021年
公開日: 2021/10/20
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我が国の無償資金協力事業において入札の不落が頻発し問題となっている.JICAは無償資金協力事業の課題点を整理し,その中で事業費積算精度に課題があることは認識しているものの,積算精度の改善に対する根本的な原因は未究明である.本稿では現在JICAにて採用されている日本の積算基準について,海外の案件での適用精度について現地の積算基準との比較により検証し,入札不落の発生要因について考察した.その結果,日本の積算基準の海外での適用は工種によっては過少評価される可能性はあるが海外の積算基準により算出された価格との相違は大きくない事が示唆された.一方で,無償資金協力事業では総価一式請負契約や予備費を算入できない点が標準的な国際事業と異なっており,そのことが入札不落の原因の一つと考えられることも試算により示された.
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