2021 年 77 巻 1 号 p. 37-56
高速道路高架橋の鋼床版において多数の疲労き裂が発生・進展すれば,鋼床版の疲労耐久性に著しい影響を及ぼす.事後補修を行ったとしても健全性の根本的な回復が期待できない変状や損傷に対しては,発生状況や進展過程を勘案しながら大規模な修繕や更新を視野に入れた維持管理計画を策定する必要がある.本研究では,目視点検では直接観測することが困難な疲労き裂の発生時点を潜在変数として明示的に考慮して,鋼床版における疲労き裂の発生・進展過程を予測するための方法論を開発する.さらに,推定した疲労き裂の発生・進展過程に基づいて将来の修繕費用を算出するとともに,通常修繕箇所と大規模修繕箇所をそれぞれ選定するための枠組みを提案する.最後に,実際の高速道路高架橋の鋼床版を対象として,提案手法の有用性を議論する.