2021 年 77 巻 1 号 p. 57-68
アジア等新興国のインフラ事業は,資金調達,設計,建設,運営,管理を一体的に発注し,民間企業の資金力,技術力が積極的に活用されるため,民間企業に大きな裁量が与えられる一方,契約締結後のリスクへの対処が課題となる.本研究では,主要な新興国の一つであるインドの道路事業に着目し,日本企業が実際に経験したリスク事例や,リスクの経験を踏まえ,調査・設計等の段階からリスクの低減を図り,日本企業の受注に至った事例に基づき,主要なリスクの発生要因と低減策を考察した.その結果,新興国の土木系のODAインフラ事業において,日本企業が,①価格競争力,交渉力等があり信頼できる現地企業等との連携,②得意とする技術を中心とした参画,③調査・設計等の段階から関与することによる設計の質の向上,を図ることの重要性を示した.