2022 年 78 巻 1 号 p. 1-20
社会基盤施設の老朽化に伴う維持更新費用の増加は,長年指摘されてきた課題である.特に長期に亘る今後の財源確保は実務的な重要課題ではあるが,社会基盤施設の劣化過程に不確実性が介在するために,維持更新に関する計画予算と,予想外の劣化に伴い増加した実費用との差異が無視しえない.このため,社会基盤施設の劣化過程の不確実性に伴う維持更新費用の不確実性を低減させる方策が不可欠である.本研究ではリスクファイナンスの観点から社会基盤施設の維持管理における保険の適用可能性について考察する.具体的には,トリガー事象の発生で保険金の支払いが可能となる即時性を有するパラメトリック型保険に着目して,実橋の点検データを用いた劣化予測を行い,その結果に基づく数値シミュレーションを通して保険の適用可能性を検証する.