土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
ISSN-L : 2185-6605
78 巻, 1 号
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和文論文
  • 稲垣 博信, 山岸 拓歩, 貝戸 清之
    2022 年 78 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     社会基盤施設の老朽化に伴う維持更新費用の増加は,長年指摘されてきた課題である.特に長期に亘る今後の財源確保は実務的な重要課題ではあるが,社会基盤施設の劣化過程に不確実性が介在するために,維持更新に関する計画予算と,予想外の劣化に伴い増加した実費用との差異が無視しえない.このため,社会基盤施設の劣化過程の不確実性に伴う維持更新費用の不確実性を低減させる方策が不可欠である.本研究ではリスクファイナンスの観点から社会基盤施設の維持管理における保険の適用可能性について考察する.具体的には,トリガー事象の発生で保険金の支払いが可能となる即時性を有するパラメトリック型保険に着目して,実橋の点検データを用いた劣化予測を行い,その結果に基づく数値シミュレーションを通して保険の適用可能性を検証する.

  • 藤原 優, 村上 豊和, 小泉 圭吾, 星野 弘明, 堤 浩志, 小西 貴士
    2022 年 78 巻 1 号 p. 21-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

     NEXCO3会社が管理する高速道路(以下,高速道路)の土工区間には,伸縮計や孔内傾斜計等の計測センサを設置し,携帯電話網とインターネットを利用したデータ通信システムを整備して変状のモニタリングを行っている法面がある.これに対して,高速道路下には災害時にも通信回路が機能するよう光ケーブル網が整備されているが,主に情報板等の道路管理施設を維持するための利用に留まっており,法面の変状モニタリングに活用するまでに至っていない.本論は,新名神高速道路の高槻JCT・IC~神戸JCT間の法面を対象に自営回線を利用した計測データの常時モニタリングを試行し,地震時・降雨時のデータ分析から維持管理を効率化する方法を示した.

  • 後藤 大輝, 小澤 一雅
    2022 年 78 巻 1 号 p. 38-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     公共工事のサプライチェーンで活用する情報システムを社会実装するにあたり関係者間の合意形成を行うには,各利害関係者が個別に負担する費用に加え,開発や運用にかかる費用分担は,発注者,元請,下請の各主体によって公平かつ経済合理的に実現される必要がある.本論文では,ブロックチェーンとスマートコントラクト技術を活用した施工管理情報システムを対象に,その開発や運用に関する費用分担の在り方を検討することを目的として,協力ゲーム理論に基づき,提携順序に時間的前後関係を考慮した加重シャープレイ値と順序仁を公共工事のサプライチェーンに適用し,費用分担の公平性と経済合理性を評価した.その結果,加重シャープレイ値を用いたモデルは,適切な配分手法となり得ることを示した.

  • 生嶋 理恵, 水谷 大二郎, 佐津川 功季, 川崎 洋輔, 桑原 雅夫
    2022 年 78 巻 1 号 p. 51-69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,現場技術者へのアンケート調査により,維持管理施策の改善可能性がある高速道路設備(以下,設備)の種類を選定するための方法論を提案する.高速道路管理者は,膨大な種類の設備を維持管理する必要があるが,故障履歴データの詳細な分析などにより,設備ごとに適切な維持管理施策を網羅的に把握するのは困難である.本研究では,日常的に維持管理業務を行う現場技術者に設備の特性に関するアンケート調査を行い,設備の種類ごとに故障特性や故障時の利用者への影響を簡易的に把握する.その上で,提案する方法論により,i)設備の種類ごとに適切な維持管理施策が把握できること,ii)アンケート調査結果に基づき現状の維持管理施策の改善可能性がある設備のスクリーニングが可能であること,を確認する.

  • 大西 智樹, 宮本 和明, 五艘 隆志
    2022 年 78 巻 1 号 p. 70-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

     わが国の地方公共団体におけるPFI事業等の事業者選定は,価格点と性能点の加算による合計点に基づく総合評価方式により行われるのが一般的である.その場合,性能点は要求水準を上回る追加的な提案に対する支払い意思額の「価格点換算」に相当すると考えられることから,原理的には,価格点,性能点ともに1点あたりの金銭換算値が存在する.そのため,本来であれば価格点と性能点を加算するにあたり,両者間のキャリブレーションを行う必要があるが,従来はほとんどそのことが指摘されることがなく,また実施されてこなかった.そこで,本研究では,総合評価における価格と性能の評価点をキャリブレーションするための性能点の金銭換算方法を提案し,シミュレーションにより実際の事業への適用可能性を示した.

  • 栗原 則夫, 末岡 徹, 石井 裕泰
    2022 年 78 巻 1 号 p. 81-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

     わが国では,戦後の高度経済成長期の社会インフラ整備に伴って,建設産業は大きく発展した.あわせて設計及び施工技術がそれぞれ進歩し,各種マニュアル化が進む中,地盤構造物に関わる事故やトラブルの回避・抑制に向け継続的な取り組みがなされている.その一環として,地質・地盤リスクマネジメントを地質技術者と地盤技術者を中心に関係者が協働して実践していくことが試みられている.本論文では,地盤構造物の設計法の変遷についてレビューし,より一般化された人工物工学の設計の定義に基づいて,地盤構造物およびその設計を新たに定義することを提案する.筆者らは,本提案は,地質・地盤リスクマネジメントを推進していく上での基礎的な考え方として有効であると考えている.

  • 貝戸 清之, 慈道 充, 水谷 大二郎, 小林 潔司, 宇野 裕亮
    2022 年 78 巻 1 号 p. 99-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     社会基盤施設に対する長寿命化技術に関しては,その導入効果を定量的かつ継続的に評価するための枠組みを構築しておくことがアセットマネジメントを実践していく上で重要な課題となる.本研究では,長寿命化技術の導入効果を導入前後の劣化速度の差異として評価する.その際に,長寿命化技術の導入効果が劣化過程のいずれの段階で最も発現し得るかを明らかにするために,劣化速度を規定する劣化ハザード率に対して,健全度ごとに段階的に変化する劣化異質性を考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルを提案する.推定された異質性パラメータの差異の有意性を仮説検定により評価し,長寿命化技術の導入効果を定量的に事後評価する.さらに,実際の点検データを用いて高速道路RC床版への防水層導入効果を評価し,提案手法の有用性を示す.

  • 二宮 陽平, 水谷 大二郎, 貝戸 清之
    2022 年 78 巻 1 号 p. 118-132
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     道路標識や照明施設などの小規模附属物は,道路主構造物と比較して寿命が短い.道路主構造物の老朽化が顕在化するような路線においては,小規模附属物は複数回の更新を経験している可能性があり,既往の方法論を用いて劣化予測を行う際には,点検データと同時に更新履歴データが必要となる.しかし,小規模附属物は維持管理上の優先性に劣ることから,更新履歴データが蓄積されていない場合が少なくない.そこで本研究では,個々の照明柱の更新時点および更新回数を潜在的な確率変数と捉えた上で,照明柱の劣化・更新過程をモデル化する.さらに,照明柱に対する実際の点検データを用いた実証分析を通して,本研究の有用性を議論するとともに,劣化予測結果に基づく倒壊リスク分析によって今後の照明柱の更新計画の妥当性を検証する.

  • 松下 文哉, 小澤 一雅
    2022 年 78 巻 1 号 p. 133-147
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

     近年,i-Constructionの取組みにより現場の施工管理情報をICT土工を中心にデジタル情報として比較的容易に取得できるようになってきている.本論文では,ICT土工を対象とし,ブロックチェーン及びスマートコントラクトを用いて出来高査定から支払のプロセスを自動化するシステムのプロトタイプを開発することを目的とした.開発したプロトタイプシステムを用いて国土交通省関東地方整備局発注の河道整正工の掘削工に適用し実証試験を実施し,システムの有効性の確認を行った.

  • 二宮 仁志
    2022 年 78 巻 1 号 p. 148-163
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

     人口減少・節水型社会への移行や産業構造の変化等に伴う水需要・料金収入の減少,水道施設の老朽化の進行・耐震化による改築・更新費用の急速な増大など水道事業は厳しい経営環境にある.2018年の水道法改正では,水道事業でもコンセッション方式の導入が可能となるなど,新たな民間活力導入による経営改善の可能性が期待されている.一方,その導入には,事業のリスクや採算性を適切に分析・評価し,公共サービスとしての特性を十分踏まえた契約方式の採用・運用が不可欠といえる.本研究は,水道3事業の経営シミュレーションモデルを構築するとともに,バンドリング・コンセッション方式の導入効果と課題について定量的に分析・考察することを目的とする.

  • 山岸 拓歩, 水谷 大二郎, 小濱 健吾, 貝戸 清之
    2022 年 78 巻 1 号 p. 164-183
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

     統計的劣化予測のために,マルコフ劣化ハザードモデルなど,点検間隔が不均一である点検データベースを用いたマルコフ推移確率の推定手法が多く提案されており,実務への適用事例も多く存在する.しかし,それらの手法は専門性が高く,実務者による活用に技術的な障壁があることが少なくない.一方,点検データベースの数え上げ手法は概念的に理解が容易である反面,点検間隔が不均一である場合への適用が困難とされてきた.本研究では,点検間隔が不均一である点検データベースを点検間隔が均一となるように疑似的に再構成することにより,点検間隔が均一である場合の数え上げ手法への帰着を図る.最後に,提案手法の有用性を実橋梁の点検データベースを用いて検証するとともに,提案手法と既存手法の関連性や実務への適用可能性について論じる.

  • 谷本 圭志, 柏野 築
    2022 年 78 巻 1 号 p. 184-191
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     地方では公務員や建設業の従業者の減少などにより,インフラの維持管理人員を継続的に確保することに懸念が生じており,今後,道路の巡回パトロールにおいても限られた人的なリソースのもとで,より効率的に巡回する必要性が高まると考えられる.しかし,日々の巡回を計画するに際しては,過去の巡回の履歴を踏まえ,管理している多くの区間からその日に巡回する区間を適切に選択する必要があり,経験と勘を中心とした選択には限界がある.そこで本研究では,巡回ルートの候補が予め与えられているという前提をおくことで,計算量の増加を抑えうることに着目しつつ,日々における道路の巡回の計画を立案するための手法を混合整数計画法に基づいて開発する.その上で,実際の地域への適用を試みる.

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