オレオサイエンス
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特集総説論文
患者に優しい製剤を目指して
-シクロデキストリンで薬の苦味をマスクする-
石黒 貴子
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2015 年 15 巻 9 号 p. 423-430

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抄録

医薬品の苦味は服薬におけるノンコンプライアンスを引き起こし,治療効果を低下させる原因となる。特に,小児や高齢者,嚥下困難な患者は錠剤が飲み込めないため,粉薬や水薬,口腔内崩壊錠(OD錠)が好まれるが,これらの製剤では,薬物が既に溶解あるいは唾液中に速やかに溶解し,舌の味細胞に直接接触するため,苦味のマスキングが必要となる。苦味マスキング法には物理的,化学的,官能的手法があり,化学的手法の一つとして,環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CyD)との包接複合体形成を利用した苦味軽減法がある。CyDは,様々なゲスト分子と溶液および固体状態において包接複合体を形成し,ゲスト分子の物理化学的性質を変化させることから,薬物の製剤特性の改善に利用されている。本総説では,CyDによる薬物の苦味軽減例ならびにその苦味軽減メカニズムについて紹介する。これらの結果は,CyDによる苦味マスキングを行う上で有用な基礎資料になるものと考えられる。

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© 2015 公益社団法人 日本油化学会
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