便益計測の代表的手法の一つである資産価値法では,資産としての不動産の価格をヘドニック・アプローチによって推定する方法が採られることが多い.言うまでもなく不動産データは,位置座標を持った空間データであり,位置に起因する空間的な依存性や異質性が存在する.近年,空間計量経済学や地球統計学と呼ばれる分野において,このような空間データの特性を考慮した『空間ヘドニック・アプローチ』を用いて分析を行う研究事例が蓄積されてきたが,これまでのところ,社会資本整備の便益評価に用いられた例はなく,適用にあたっての問題点は明らかになっていない.そこで本研究では,空間ヘドニック・アプローチの社会資本整備や環境質の便益計測への適用について,理論と実証の両面から課題とあり方を議論する.