土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
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66 巻, 2 号
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和文論文
  • 三和 雅史, 大山 達雄
    2010 年 66 巻 2 号 p. 89-105
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     我が国の鉄道重大事故統計データを用いて,鉄道重大事故防止のための課題を示し,それに基づく防止策を提案すると共にその効果を評価する.まず,鉄道重大事故の発生状況分析として,事故件数や事故被害状況の概略を示す.ここでは,発生間隔日数,死傷者数,運転支障時間の特徴を示し,またこれらの各分布が指数分布に従い,鉄道重大事故現象が確率分布に従う確率現象として説明できることを検証する.また,件数が多い踏切障害事故,列車脱線事故,列車衝突事故の発生要因を各事故種類別に分析し,各種事故防止のための課題を明確化する.最後に,得られた課題に基づいて事故防止策を提案し,その効果を評価する.
  • 横松 宗太
    2010 年 66 巻 2 号 p. 106-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     自然災害リスクの認知には個人差が存在する.一方,近年,自主防災組織によるコミュニティ防災の重要性が主張されており,同時に組織の中で住民間のリスクコミュニケーションが進む効果が期待されている.本研究では自主防災組織に属する住民間のコミュニケーションの過程をモデル化し,活動マニュアルを与えて誘導するかたちのコミュニティ防災の促進は活発なリスクコミュニケーションを導かない可能性があることを示す.このようなときリスクコミュニケーションは自主防災活動とは独立に行われた方がよい場合があることを示唆するとともに,住民が自由に活動レベルを選択する場合にはリスクコミュニケーションの実現可能性が拡がることを示す.
  • 河野 達仁, 光谷 友樹, 岸 昭雄, 能登谷 浩路
    2010 年 66 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     近年,わが国の地方都市では郊外の大規模商業立地による都心商業の郊外化(都心空洞化)が問題視されている.都心空洞化が経済効率の観点から問題になるのは,市場の失敗が存在する場合に限られる.本研究は,複数財一括購入により発生するショッピングの外部性(商業集積により一度のトリップで様々な財が購入できること)および商業施設間の独占的価格競争をモデル化することによって,これらの特徴により生じる技術的外部性の特徴,市場均衡と社会最適点との比較,および交通施設整備による商圏変化と社会厚生の変化,の三点について分析する.その結果,技術的外部性発生のメカニズム,都心および郊外の商業施設の商圏の過大・過小の関係,ならびに交通施設整備便益の評価手法が示される.
  • 梶田 佳孝, 外井 哲志, 佐々木 友子
    2010 年 66 巻 2 号 p. 137-146
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
     違法駐輪対策の一環である自転車撤去は,その後の自転車利用者の駐輪行動にどのような影響を及ぼすかは十分に検証されていない.本研究は,違法駐輪と撤去の関係の考察後に,福岡市天神地区を対象に保管所,路上,駐輪場の3箇所で違法駐輪に関する意識を調査し,撤去が自転車利用者に及ぼす影響を分析した.その結果,1)駐輪場利用者の7割強が違法駐輪経験者,2割弱が撤去経験者で,違法駐輪対策の効果として駐輪場利用が進んだこと,2)違法駐輪の撤去とその後の駐輪行動の割合を表す関係式を導き,調査データから各変数を推定できたこと,3)保管料上昇は被撤去者の自転車離れを進める可能性のあること,4)撤去強度を上げると駐輪場利用者が増え違法駐輪者が減るが,その減少幅は小さいこと等が得られた.
  • 溝上 章志, 橋本 淳也, 末成 浩嗣
    2010 年 66 巻 2 号 p. 147-159
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     過度に自動車に依存した人々の行動を個人的にも社会的にもより望ましい方向へ自発的に変更させるためのモビリティ・マネジメントが,近年,学校教育や職場,地域等で適用されている.本研究は,熊本電気鉄道の沿線地域における公共交通機関,特に熊本電鉄線の利用促進を目的として,延べ16,800世帯を対象とした標準TFPを実施し,その有効性を評価したものである.本論では,事後アンケートで得られたデータの統計的分析を通じて,公共交通機関の利用促進に対する各種TFP技術の効果を検証しただけでなく,実際に熊電に転換したTFP参加者を駅間利用実態調査で捕捉することによって,TFPの効果を観測により実証した.これらの結果より,効果的なTFPを実施するためのマーケットセグメントを分離した.
  • 和田 健太郎, 赤松 隆
    2010 年 66 巻 2 号 p. 160-177
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,“交通渋滞 (queuing congestion)”と“交通混雑 (flow congestion)”の2種類の経済外部性を解消し,かつ詳細な利用者情報を必要としない交通需要管理スキームを提案する.これは近年,ITSを活用した近未来型交通制度として提案された“ボトルネック通行権取引制度 (TBP)”を拡張したものである.TBPに関するこれまでの研究では,交通混雑を考慮しておらず,またマイクロ・メカニズムは明らかにされていない.そこで,本稿では,交通混雑を明示的に扱い,提案スキームのマイクロ・メカニズムをオークション理論及び,進化・学習ゲーム理論に基づき構築する.そして,提案スキーム導入下のマクロな交通流パターンが,社会的交通費用が最小となる社会的最適状態へと収束することを明らかにする.
  • 堤 盛人, 瀬谷 創
    2010 年 66 巻 2 号 p. 178-196
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     便益計測の代表的手法の一つである資産価値法では,資産としての不動産の価格をヘドニック・アプローチによって推定する方法が採られることが多い.言うまでもなく不動産データは,位置座標を持った空間データであり,位置に起因する空間的な依存性や異質性が存在する.近年,空間計量経済学や地球統計学と呼ばれる分野において,このような空間データの特性を考慮した『空間ヘドニック・アプローチ』を用いて分析を行う研究事例が蓄積されてきたが,これまでのところ,社会資本整備の便益評価に用いられた例はなく,適用にあたっての問題点は明らかになっていない.そこで本研究では,空間ヘドニック・アプローチの社会資本整備や環境質の便益計測への適用について,理論と実証の両面から課題とあり方を議論する.
  • 青木 達也, 永井 護
    2010 年 66 巻 2 号 p. 197-216
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,足尾銅山の山林荒廃とその復旧の歴史的変遷を通して,被害を最も強く受けた松木地区やそこに残る遺構の意義を検証している.歴史的変遷の整理においては,古河所蔵の新たな史料なども加えて,国,県,古河がどのような対応をしてきたのかを纏めた.その結果,山林の荒廃と復旧は足尾銅山の産銅技術と環境対策の発展のみならず,明治からの足尾における治山・砂防事業の試行錯誤の過程を如実に表していることがわかった.これらの知見により,地区や遺構は歴史的遺産として価値があること,また,保存,復旧,活用をバランス良く進めることによりそれらの活動に相乗効果が生まれることが十分にあることを示した.
  • 泊 尚志, 藤井 拓朗, 矢嶋 宏光, 屋井 鉄雄
    2010 年 66 巻 2 号 p. 217-231
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     社会資本整備の計画プロセスにPI(パブリックインボルブメント)を導入する事例の蓄積に対応して,計画プロセスやPIの標準的なありかたを示すガイドラインが整備されてきている.しかし,これらの記述は多様であり,その運用方法によってはPIが形通りに実施されかねず,個別の計画検討においてPIが積極的に実施されなかったり,PIの意義や目的が誤られたり失われたりする場合も懸念される.本稿では,これらをPIの形骸化と捉え,これが生じ得ることを指摘した上で,実際のガイドラインの記述からPIの形骸化に関する論点を抽出した.さらにこれらを類型化し,PIの形骸化に至る問題構造を明らかにするとともに,ガイドラインを運用する際の留意事項を構造化して提言した.
  • 高山 雄貴, 赤松 隆
    2010 年 66 巻 2 号 p. 232-245
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     都市経済学分野では,Beckmann3)を先駆として,「都心形成」現象を説明する研究が蓄積されてきた.しかし,これらの既存研究では,均衡解の一意性・安定性を全く議論しておらず,均衡状態・社会的最適状態ともに,対称な立地パターンを前提として分析している.そこで,本研究では,Beckmannモデルの均衡解の一意性・安定性を確認する方法を示した.その方法を利用することで,Beckmannモデルの均衡解が一般的に一意ではなく,既存研究で知られる対称な立地パターン以外に,非対称な均衡立地パターンが存在することを明らかにした.さらに,均衡状態では,対称な立地パターンより,非対称な立地パターンの方が効率的であることを数値実験により確認した.
  • 林 倫子, 神邊 和貴子, 出村 嘉史, 川崎 雅史
    2010 年 66 巻 2 号 p. 246-254
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,明治・大正期に鴨川の河川空間が官有地となり京都府の管理下にあった時期を取り上げ,官有地利用に関する行政文書など当時の史料の読み取りを通じて,料理屋・貸座敷営業者による先斗町の鴨川河岸地と堤外地の土地利用の仕組みを解明した.その結果,[1]当時の先斗町の鴨川官有地は,営業者にとって付加価値の高い場所として認識されていたこと,[2]先斗町の営業者は,河岸地を宅地として隣接する民有地と一体的に利用しており,その地先に当たる堤外には高床構造や床几構造を設け,それぞれ別の契約によって官有地を借用していたこと,[3]営業に用いる河川構造物は営業者が私費を持って設置・修繕を行っており,京都府は一定の節度を持ってその可否決定をなすことで鴨川の河川環境を管理していたことが明らかになった.
  • 関 達也, 森本 章倫
    2010 年 66 巻 2 号 p. 255-268
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     我が国における大規模開発の交通アセスメントに関する研究は,1990年頃から取り組みが本格化され,その重要性や課題等が議論されてきた.交通アセスメントを我が国で初めて法律として制度化した,大規模小売店舗立地法が2000年に施行されるなど,交通アセスメントの実績は着実に増えている.これまで交通アセスメントに関する多くの研究が発表されているが,体系的に整理した研究は見あたらない.
     そこで,これまでの交通アセスメントに関する取り組みを交通と土地利用の観点から整理し,我が国における交通アセスメント分野の今後の展望を考察した.
  • 竹林 幹雄
    2010 年 66 巻 2 号 p. 269-278
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     本論文ではエアラインの戦略としてネットワークデザインに加え,機材選択を考慮し,モデル化した.具体的には,既開発のbi-level型航空旅客輸送市場モデルを拡張し,エアラインの戦略に機材選択を組み込んだモデルを提案した.そして,均衡解として部分ゲーム完全解を採用した.ハブスポーク型輸送を対象とした数値計算の結果,機材間の輸送費用の差,および旅客の輸送頻度に対する感度で小型多頻度化の程度が異なることがわかった.また,ハブ空港における発着回数制限を組み込んだ感度分析の結果により,小型多頻度化が生じる区間があるものの,必ずしも全ての路線で小型多頻度化が進行するのではないことが示され,小型機に特化したエアラインの参入によって多頻度化が進行することがわかった.
  • 河野 達仁, 宮原 史, 織田澤 利守
    2010 年 66 巻 2 号 p. 279-289
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     近年,多くの先進国は人口減少社会を迎えている.人口減少に転じた社会においては,古い住宅地が再開発されたり,次々と撤退していく都市が存在すると考えられる.本研究は開放型の単一中心都市において住宅地の開発・建て替え・撤退の動学モデルを構築し,住宅地の空間的立地パターンの変遷を明らかにする.主な分析結果として,建て替え時に,地代が十分に高い(低い)場合,CBD付近の住宅が郊外の住宅地よりも小さい(大きい)ロットサイズに建て替えられることを示す.また,撤退時には,CBDに比べて郊外の住宅のロットサイズの方が大きい一般的な都市において,単位距離あたり通勤費用が小さく,かつ現存の住宅のロットサイズがある閾値を下回る場合には,住宅地はCBDから郊外に向かって農地(放置を含む)に転換されることを示す.
和文報告
  • 谷口 守, 橋本 成仁, 植田 拓磨
    2010 年 66 巻 2 号 p. 290-299
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/18
    ジャーナル フリー
     近年,急速なIT技術の発展が我々の生活スタイルを大きく変化させている.個人の買物行動もその例外ではなく,EC(E-Commerce)をはじめとする新たな買物行動の形が誕生している.このような買物行動の変化は実空間上の買物客をサイバー空間上へと代替させることで,都市の賑わいや活力を損なう可能性が指摘されているが,その空間代替の実態は十分に明らかにされていない.本報告では,個人行動特性に配慮し空間代替の解明を試みた.その結果,個人行動特性によって空間代替性は異なっていることが明らかとなった.また,EC経験者におけるサイバー空間への潜在的な代替量は2005年時点で年間平均2.68回であり,その値は急速に増加している可能性が明らかとなった.
和文ノート
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