抄録
ある一定の確率で気候変動による温度上昇を2度以内にするためには,2050年に世界全体の温室効果ガスを1990年比で半減する必要があるといわれている.本研究は多地域・多部門逐次動学型応用一般均衡モデルを用いて,この排出目標達成の実現可能性,その時の対策メニューやマクロ経済への影響を明らかにする.また,排出許可証取引が可能な場合とそうでない場合のシナリオを設定し,排出許可証取引の効果を分析する.推計の結果,上述の目標は達成可能であり,そのときの限界削減費用は750$/tCO2であった.エネルギー効率改善,再生可能エネルギー,炭素隔離貯蔵技術が主たる対策の中身であった.レファレンスケースに比べGDP損失は,排出許可証取引が自由に行える場合は4.5%,排出許可証取引が行えない場合は6.1%であり,排出許可証取引は多くの地域にとって有益な施策の一つであった.