2011 年 67 巻 6 号 p. II_255-II_266
本研究では温室効果ガス(GHG)排出量制約に対応した逐次動学型応用一般均衡モデルを日本に適用した.原子力発電や排出許可証取引,CCS技術について様々なケースを想定しシミュレーションを行うことで,施策の影響,特に経済に及ぼす影響の定量的な評価・分析を行った.分析の結果,日本においてGHG排出量削減策として最も重要となるのは他国との排出許可証取引の有無であり,取引を行わない場合,GHG排出価格は2050年に2560 USD(2005年価格)まで上昇し,GDPも最大で3.8%減少することが分かった.原子力発電については2050年に撤廃を目指す場合でもCCS技術と排出許可証取引により補完が可能であり,また,CCS技術の導入スピードについてはGDPや排出価格にほとんど影響を及ぼさないことが分かった.