抄録
本研究では,湖面積減少が著しい中国内モンゴル其甘湖流域を研究対象地域として,流域内の9村において,地下水の持続可能な利用方法を明らかにするため,地下水使用量と地下水涵養量を算出して地下水収支を検討した.その結果,全流域において,2010年に地下水位は1.0m/年低下したことが明らかになった.また,其甘湖流域の水使用量の99.4%を占める灌漑用水の効率的利用を,地下水位低下の防止と農業収入の維持の観点から検討した.その結果,作物転換から考えた場合,水効率が最も良い作物に転換すると地下水位低下量を現状より年間3割程度緩和できるが,農業収入は現状の農業収入より8%減少することが明らかになった.一方,農業用水路のライニング改善により水路からの損失を改善した場合,建設費が必要なものの農業収入を下げずに,地下水位低下量を現状より年間6割程度緩和できることが明らかになった.