抄録
気候変化と気候変化に対する緩和策の実施により生じる,食料消費への影響をもたらす可能性のある要因として次の3つが挙げられる.i)気候変化による作物収量の変化,ii)バイオエネルギーの導入による食料作物とエネルギー作物との土地の競合,iii)緩和策の実施に伴うマクロ経済の変化,である.本研究では,上の3要因の食料消費への影響を定量的に示した.さらに,これらの影響は,先進国から中・低所得国への資金移動により軽減することが可能かについても検討した.結果から次の2点が明らかとなった.2℃目標の達成に向けた強い緩和策を実施する場合,食料作物とエネルギー作物との土地の競合,マクロ経済の変化による食料消費への影響は,気候変化による影響と比べて決して無視できない程度であった.2050年,先進国から中・低所得国への870億ドル(2050年世界GDPの0.06%相当)の資金提供により,これらの国々での緩和策による食料消費への負の影響は緩和策を実施しない場合での水準まで軽減できることが示された.