2013 年 69 巻 7 号 p. III_307-III_313
沿岸生態系への溶存態ケイ素(DSi)の影響を把握するために有明海北東部海域のDSiを含む栄養塩濃度とプランクトンを調査した. 同海域では年二回のDSi濃度の減少がみられた. 特に毎年2-3月の濃度減少が大きく, 溶存無機態リン(DIP)濃度も枯渇する状況にあった.この減少は大型珪藻Eucampia spp.等の増殖によるものと考えられた. その際の栄養塩比DSi/DINについては1以下, DSi/DIPについては10以下と著しく低下していた. このような栄養塩比に空間的分布が生じていたが, 地点間の珪藻プランクトンの発生状況に大きな違いは見られなかった. 毎年2-3月の栄養塩濃度低下時には, DSi濃度は珪藻の増殖制限濃度に近つき, その後2ケ月程度は珪藻の繁殖が抑制されていた.