抄録
日本の動学地域応用一般均衡モデルを用いて、将来の気候変動による稲作生産の変化が地域経済や日本経済に及ぶ影響を分析した。シミュレーション分析の結果から、将来の気候変動による気温上昇は、北東日本のコメ生産の増加、西日本の生産低下、日本全体では生産増加が予測された。生産量の増加は、米価と地代等の生産要素価格を低下させ、農業所得の減少につながる。一方、価格低下により消費者の厚生水準が増加し、他産業の生産向上によりGDPの増加効果が発現する。将来の気候変動は、日本のような中緯度地域の農業生産に有利に働くと言われているが、市場を介することにより、気候変動による生産増加が農業者の不利益となる場合があること、日本の北東と西で影響が異なることが示唆される。