抄録
4種類の異なる温室効果ガス排出シナリオに基づき,全球規模での理論包蔵水力とその将来変化を推定した.河川流量は,5つの全球気候モデルからバイアス補正した気象データセットを入力気象データとし,全球水文モデルH08を用いて計算した.1960~1989年における全球の理論包蔵水力は43,890TWhであり,将来,温暖化が進む気候シナリオほど大きな増加傾向を示した.また,流況曲線に基づく水力発電所の設計仕様の仮定の下で,河川流量の季節変動から水力発電量を推定した.この水力発電量も,将来増加傾向を示したが,その増加量は理論包蔵水力に比べると小さかった.流量設備利用率の将来変化の地理的分布は,概ね理論包蔵水力のそれと一致するが,河水利用率の将来変化の地理的分布は,理論包蔵水力のそれとは大きく異なる.流量設備利用率と河水利用率の将来変化傾向から世界各地域を4つに類型化し,それぞれの類型化した地域に特徴的な,将来の気候変動による水資源量と発電量への影響を論じた.